20 Years After -TMN通史-

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<<   作成日時 : 2006/12/07 22:13   >>

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TM NETWORKは1984年の終わりから、2ndアルバムのレコーディングに入った
小室はレコーディングに先立つ9月には、
次のアルバムではアコースティックな部分を増やすと宣言していた
アコースティックという表現は必ずしも当たらないが、
2ndアルバム「Childhood's End」におけるエレクトロポップの雰囲気は、
確かに薄れている


その音はあくまでもシンセサウンドなのだが、
誤解を恐れずに言えば、
トゲがなくなっているわけではないものの、減っている
よく言えば、洗練されている
「Rainbow Rainbow」がシンセを強調したドギツイ音だったことと対照的である
当時のシティポップ寄りの音だったと言って良い


このアルバムの制作過程については次章で触れるが、
アルバムリリース前にシングルをリリースすることは決定しており、
当初は「8月の長い夜」が候補に挙がっていた
だが「Childhood’s End」の曲が一通り出来上がった後、
改めて「Rainbow Rainbow」との間をつなぐ音で一曲作り、
先行シングルとすることになったという


これがTM NETWORKの3rdシングル「アクシデント」である
つまり当初「Childhood's End」は現在の商品版よりも1曲少なく、
10曲入りのアルバムになるはずだったらしい


「アクシデント」は4/11にレコーディングを終えたが、
その時点でも曲名は決まっていなかったという
歌詞に「アクシデント」というフレーズがないことを考えても、
この曲名は機械的にではなく、かなり考えた上で決めたものだったのだろう


音については「Rainbow Rainbow」の中では、
「パノラマジック」に近いと言えるだろう
またBメロで少しテンポを落とし、
シンセとコーラスで盛り上げ、サビへつなぐというパターンは、
「1974」に近いともいえる
曲調がまったく変わることで旧ファンが離れていくことについては、
スタッフの間でも懸念があったのだろう


ただ今聞くと、圧倒的に「Childhood's End」の音であり、
耳に残る電子音の印象はあまりない
少なくとも最初に一聴した時、ファンは「1974」とは違う曲と感じたであろう
しかしこれがシングルにされたということは、
この方向性こそが次のTMの音と考えられていたということを示している


結果的にこの曲は、セールス面ではあまり成功しなかったし、
後のTMの歴史の中でもほとんど省みられることのない作品である
しかし小室は、この方向転換が成功に結びつくものと信じていたはずである


シンセを前面に出したエレクトロポップ路線の「Rainbow Rainbow」は、
どうしても人を選ぶ音である
電子音の好き嫌いは今でも人によって差が大きいから、
当時としてはなおさらだっただろう
そして「Rainbow Rainbow」はセールス面では失敗した
その後「1974」で多少は持ち直したものの、
まだ全国的なヒットと言えるレベルでは到底なかった
そこで小室は一旦この方向性から離れ、
人を選ばない、より普遍性のある音を目指したのである


小室は2014年、リミックスアルバム「DRESS2」に、
「Childhood's End」収録曲のリミックスとして、
「Accident 2014」「永遠のパスポート2014」を収録しているが、
小室は両曲がヒットを狙って作った曲だったので、
当時のリベンジとして収録したと述べている
特に「アクシデント」はその制作経緯を見ても、
「狙って」作った曲だったと言えるだろう


歌詞は恋人と別れる時の男の気持ちを歌ったもので、
非常に青春している歌詞だ
SF的な要素はまったくない
「1974」的なファンタジー路線の歌詞を期待したファンは、
肩透かしを食らった気分だっただろう

栗色の長い髪 つむじ風のように舞う
熱いほほをなぐった 灼けた夏のペイブメント
逢えない時間ばかり 悪いうわさになって
君はそばにいてくれた あいつに心ひらいた
言葉が足りないだけさ 思いは込めているのに
風を見ていたしぐさが 君を悩ませた


「アクシデント」は作曲・編曲は小室だが、
作詞は松井五郎が担当している
歌謡曲寄りのツボを押さえていることに期待しての登用だった
松井がTMに関わったのは、
この後では2014年「Quit30」に収録された「if you can...」しかなく、かなり例外的である


当時松井は安全地帯に多くの詞を提供していたが、
安全地帯が1983年以来ラブソングで多くのヒット曲を出していたことは念頭にあったはずである
折しも松井は1985/1/25リリースの安全地帯「熱視線」を作詞し、
オリコン2位の記録も出していた


実は松井は最近、安全地帯との関係に小室が関わっていたことを証言している
1983年に小室がプロデュースしたバンドの歌詞を見た安全地帯関係者が、
松井に仕事を依頼したと言うのだ
これは1983/9/21小室プロデュースでデビューしたSERIKA with DOGの「CAUTION」のことだろう
本アルバムでは全10曲中、
シングル「Lady Xを捜せ」を含む5曲を松井が作詞している


松井が始めて安全地帯と関わったのは、
1984/4/1リリースのシングル「真夜中過ぎの恋」のカップリング曲「…ふたり…」であり、
レコーディングは1983〜84年の年末年始頃だろう
声が掛かったのは「CAUTION」リリースからまもなくと考えられる


要するに松井は売れっ子作詞家になる以前から、小室と縁を持っていた
松井も「その仕事がなかったらその後の僕の人生は大きく変わっていた」と発言している
小室はこの縁を通じて、一曲だけシングル曲の作詞を依頼したのである


「アクシデント」はTM歴代シングル中で、
もっとも歌謡曲的といわれている
特にサビの当たりは、極めて歌謡的な雰囲気が強い
メロディと歌詞だけならば、
TM以外のミュージシャンが歌っても違和感がない
松井登用の事情を考えれば、これはヒットを狙った意図的なものだといえよう


だがこの曲は、自分としては非常に好きな曲である
FANKS期にTMを知った自分としては、
FANKSともっとも遠い音だった「Childhood’s End」は、
当初ほとんど聞くことが無かったのだが、
ある日「アクシデント」のオケのシーケンスが気にかかるようになった
当初TMを聞き始めた頃は、歌メロに魅せられたところが大きかったのだが、
この時を契機にTMのオケの気持ちよさにはまり込むようになったのを覚えている


特にイントロからAメロのシンセは非常に気持ち良い
歌詞とメロディは他のアーティストが歌っても違和感がないと言ったが、
オケを聞くとやはりTMの曲だと思う
小室自身、「アクシデント」について、
「まわりの反応と比べ僕たちメンバーは大好きな曲です」と言っているように、
メンバーは気に入っていたらしい(「Vision Melodies」
小室はこの曲を作るに当たり非常に苦しんだと言い、その分思い入れもあるのだろう


「アクシデント」のカップリングには、「Fantastic Vision」が選ばれた
こちらは作詞・作曲・編曲すべて小室哲哉である
この曲はすでに1984年12月の「Electric Prophet」で演奏されており、
福岡のテレビ西日本のイメージソングとしても起用されていた
(というか、イメージソング制作の依頼がEPIC/SONYに来ていたのだろう)
実はTM史上初のタイアップは、この曲である


テーマは結婚式という、TMとしては非常に珍しいものである
冒頭には二人を祝う歓声、
2番の後には記念写真を撮るシャッターの音が入る
こういう現実的なテーマの曲があるのも、
「Childhood’s End」ならではである
さわやかな印象の気持ちいい曲である
特に2番の後の丁寧に作った感じの間奏はお気に入りである


ただしこの曲の歌詞には、
「街なみをかざるrainbow flags 今夜はここですごそうよ」とあるが、
同性愛者の象徴「rainbow flag」が登場することからすると、
この歌詞の主人公二人はゲイである可能性が高い


なおテレビ西日本で使われたのは、
シングルのカップリングとして商品化される前のプロトタイプである
これは「TM Vision T」で聞くことが出来る
歌詞は「Electric Prophet」で演奏されたものと同じである
完成版音源に入っている特徴的な歓声やコーラスも入っていない
音のバランスも完成版音源の方が格段に良い
なお「TM Vision T」バージョンでは、
Bメロで「Let’s go to space for you and I」という間違い英語歌詞が使われているが、
これは完成版では「〜for you and me」に修正された


「アクシデント」「Fantastic Vision」を収録したTMの3rdシングルは、
1985年4月に完成した後、5/21にリリースされた
ジャケットは水色の背景にメンバーの白黒写真である
メンバーはスーツ姿などフォーマルな雰囲気で、
「Rainbow Rainbow」期の派手で異様な風貌とは一線を画している



オリコンでは99位で、「1974」の97位を下回った
「1974」でつかんだファンを前提にしていたことを考えれば、
本作はセールスとしては失敗だったといわざるを得ないだろう
後に木根は、その売れなさぶりがまさしく「アクシデント」だったと言っている


この失敗は、より広い層に受け入れられる音作りを目指しながらもあまり広まらず、
一方で前のエレクトリックな音、SF的世界観に惹かれていた旧ファンを手放してしまったことを示している
同様の方向転換と失敗は、後に「EXPO」の時にも見られる
いささか辛らつな言い方をすれば、
自分のやりたい音をやって思うほどの成果が出なかった後、
世間の売れ線を狙った結果、外してしまうというパターンである


あまり評判が良くなかったためか、
「アクシデント」はライブでも、
シングルとしては異例といえるほど演奏されることが少なかった
同年に開催された「Dragon The Festival Tour」と、終了ライブ「TMN 4001 Days Groove」
「DRESS2」のアルバムツアーとしての性格が強い「the beginning of the end」を除けば、
TM名義では1986年の「Fanks Dyna-Mix」で演奏されたくらいである
ただしウツソロツアー「Tour Overtone」や、
tribute LIVEの「Spin Off from TM」大阪公演でも演奏されている


「Fantastic Vision」に至っては、
フルライブでバンド演奏されたのは「Dragon The Festival Tour」のみという冷遇ぶりである
ただし1992年「Party Pavilion」やファンイベント中のミニライブでは、たびたび演奏されている
また「tribute LIVE」「EXPO Folk Pavilion」など、小室が参加しないライブでは、
アコースティックバージョンで演奏された例が意外と多い

(2006/8/30・9/3執筆、2006/12/7・2008/9/24・2010/8/16・2013/1/14・2014/3/19・2016/11/29・2017/5/17加筆)

アクシデント
エピックレコードジャパン
1989-09-21
TM NETWORK
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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは、TMの記事をいつも楽しく拝見させて頂いております。下手なバイオ本より詳細な内容は素晴らしいです。
この記事で一点指摘させてください。古い記事への指摘で恐縮ですが、松井五郎は安全地帯の作詞で有名ですがメンバーではありません。秋元康や松本隆と同じく作詞家と言った方が良いと思います。
ちなみに私もアクシデントは大好きな曲です。イントロいいですよね。
フクライフ
2014/03/18 00:12
はじめまして!
松井五郎さんについて、基本的なところでミスの指摘、ありがとうございます
さっそく訂正しておきました

アクシデントのイントロ、私も好きです
アルバムで聞いていると、Childhood's Endからのつなぎが気持ちよいのです
青い惑星の愚か者
2014/03/19 21:54
ファイナルから数日。。やはり淋しくなってきました。
こちらを最初から読み返し、もう一度TMと出会わせていただいてます。
散逸したアルバムも一枚一枚揃えていきたいと思います。
iyotae
2014/05/23 22:05
先日はお疲れ様でした
season1終わってしまいましたね
早く次を!次を!って感じです

しばしの埋め合わせとしてこのブログを使ってくれれば本望です
とはいえ、この一年で新情報がガンガン来そうなので、第六部が終わったらまた加筆する予定なんですけどw

散逸したアルバムは是非お集めください
ベスト版とかはいらないと思うけど、オリジナルアルバムは是非!
青い惑星の愚か者
2014/05/24 12:36
管理人さま。お久しぶりです。
たまに時間を見つけては追記された過去のブログを拝読しています。
多忙な毎日の中、追記作業の時間を捻出する姿と情熱に感心し、脱帽しております。お疲れ様です。
1つ気になる点がありましたので、こちらに記しておきます。
シングル『アクシデント』の作詞家 松井五郎さんは、アルバム『Quit30』disk1(初回版・通常版)の16曲目「If you can」の作詞をされています。
アルバムのWikipediaや手元にある『Quit30』ブックレットのクレジットにも表記されてますよ。
3rdシングル「ACCIDENT」から29年ぶりのタッグになるそうです。あしからず。
かしこ。
2016/11/05 12:18
ここも含めて数カ所、第一部の情報提供ありがとうございます
if you canの件は、追記の折に書き込もうと思っていたところでした
取り急ぎ修正しておきますね

第一部はまもなく追記を行なうので、他に書き込んでくれた情報はその時に対応しようと思います
特にVampire Hunter "D"の情報は、私では追うことができなかったので助かりました
どうもありがとうございます
追記が完了したら、その折に改めて回答いたします
青い惑星の愚か者
2016/11/11 01:52

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