7-38 TM NETWORK -REMASTER-②

3/15、「坂本美雨のDear Friends」小室さんがゲスト出演しました。
小室さん、復帰したのに美雨さんと絡まないなあとは思っていましたが、このたび久しぶりの出演となりました。


美雨さん、小室さん引退後もLINEで復帰を勧めたりしていたそうで、今回の出演も美雨さん直々のお願いだったみたいです。
「Digitalian is eating breakfast Special Edition」の宣伝という名目で連絡したんでしょうか。
小室さん、「大丈夫なの?」て聞いたけど、美雨さんが「すぐ来てください」とお願いしたとか。
強引に引きずり出してくれたのはグッジョブと思います。
最後は小室さんに、また2人でのライブをやりたいとも言っていました。


今回の美雨さんは限られた時間の中で、小室さんの引退中の様子とか復帰の時の話とか今後のこととか、かなり濃密に聞いてくれました。
小室さんのお話を伺うに、今は音楽のリハビリ状態のようで、特に歌詞について悩んでいるようでした。
番組内でかけたのはインストの「炎」でしたが、これも小室さんが歌詞で悩んでいてインストを聞いてしまうためとのことでした。
そういえば「Route246」「Dreamed a Dream」も作詞はしていませんでしたしね。


小室さん、今やりたいことは何かと聞かれた時、初心に帰ってTM NETWORKでヒット曲を作りたいとの考えを述べました。
今はまだ自信が持てていないそうで、TMを再開させない理由もそこなのでしょうが、小室さんの最終目標がTMであることが分かったのは良かったです。
ファンも小室さんも気持ちは同じということですね。
安心して待っていたいと思います。
案外スタジオで籠るよりも、3人でライブを1回やったら何か取り戻せると思うんですけどね。


3/31には、BS-4K・8Kの「玉置浩二ショー」小室さんが出演しました。
こちらでも坂本美雨さんが一緒でした。
引退後初のテレビ出演となります。
番組では、「Never End」を演奏したそうです。
私は見ていないのですが、5/1にもBSプレミアムとBS4Kで再放送するとのことです。



去年の「SPIN OFF T-Mue-needs」のライブBlu-ray、FC版の受付は終わりましたが、通常版のリリースは6/2に決まりました(FC版は4月下旬)。
値段は7130円とのことです。


4/10・11には木根さんとウツの「K-FOLK 2021」が開催されます。
現時点(4/5)では、4/10公演のチケットは一般でもまだ買えるようです。
今回もオンライン配信をするのでしょうか。


木根さん作曲のアニメ「かえるのピクルス」主題歌「Hopping On」(歌も木根さん)が、3/14に配信開始となりました。
木根さんは3/28にはYBSラジオ(山梨放送)「909MusicHourz」に出演しました。
3/31には渡辺美里さんの配信ライブ「渡辺美里 スタジオライブ うたの木Vol.2」にゲスト出演しましたが、こちらは4/7までアーカイブ配信をしています。
4/6~12には、トーク配信「渡辺美里のおしゃべり広場 Vol.2」にも出演するとのことです。


では本題に入ります。
今回は3種のライブのまとめとなっているので、長いです。

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2007年11~12月に開催された「TM NETWORK -REMASTER-」5公演は、演奏された曲はほぼ同じだったが、曲順などが会場ごとに異なった。
そこで本章ではその異同を確認しつつ、会場ごとの公演内容を確認していきたい。
まず、2007/11/2・3に「楽器フェア」中のイベントとして開催されたパシフィコ横浜公演の内容から見てみよう。


ライブのオープニングで、それまで明るかった会場が暗転し、ステージが照明に照らされる。
SEとして「nuworld」が流れる。
20周年のアルバム「Easy Listening」に収録されながら、ライブでは一度も使われなかった曲だが、この時に冒頭部分だけが使われた。


SEが流れる中、メンバーが歩いて舞台袖から登場し、持ち場につく。
SEが止まってメンバーが楽器を構え、「Still Love Her」を演奏する。
ウツはこの曲の通例通り、アコースティックギターを演奏した。


ウツは常々、ライブの1曲目で客の心をつかむことを意識しているという発言をしているが、この時1曲目に盛り上がり曲ではなく、ミディアムテンポのこの曲を出して来たのは、観客も驚いただろう。
このパターンは後に30周年のライブでしばしば見られたが、それまではほとんどなかったものである。
(例外として「CAROL」組曲の「A Day in the Girl's Life」で始まった「Camp Fanks!! '89」があるが、これはCAROLのミュージカルで始まる形式だったため)


このライブは8曲目「Beyond The Time」まで、ミディアムとバラードだけで展開する。
演奏曲は全14曲だったので、実に全体の半分以上が経過してからようやくアップテンポの曲が登場したことになる。


2曲目は「Here, There & Everywhere」
「REMASTER」5公演中で、横浜の2公演でしか演奏されなかった曲で、武道館公演のDVDにも収録されていないが、「REMASTER」中でもっともレアな(したがって貴重な)選曲である。
ただしこれ以前に2004年のウツソロ「Tour overtone」や、2005年のtribute LIVE「Spin Off from TM」でも演奏されており、あるいはデータもそこから転用したものかもしれない。


TMでの演奏は、1987年の「Fanks! Bang The Gong」で3人だけで演奏して以来20年ぶりであり、バンド演奏は史上初めてのことだった。
ただし2010年代には、TMの「START investigation」「30th Final」やウツソロの「Dragon The Carnival」などで、なぜか頻繁に演奏されるようになる。


意外な選曲が冒頭に続いた後、ウツは「どうもこんばんは!」と言ってMCを始める。
「楽器フェア40周年に呼んでいただき、心から感謝いたします!」
ウツはさらに、今日はシングルをいっぱい演奏すると述べる。
ただし実はここまで演奏した2曲はシングルではない。


次の曲は「Love Train」と両A面としてではあるが、一応シングル表題曲の「We love the EARTH」である。
続いて「Human System」「Seven Days War」を演奏する。
この2曲では小室のグランドピアノが目立っている。


MCコーナー。
ウツが木根・小室に話を振り、他愛のない昔話をしつつ、ニューシングル「Welcome Back 2」と制作を終えたばかりのアルバムの宣伝を行なう。
次のアルバムが何枚目になるか分からなかったウツが、「なんとなく10枚前後かな」(実際にはミニアルバムを除き11枚目)と言ったところ、木根が「ベストは100枚くらい出てるよ」と、自虐的なコメントをしたのは、なかなか印象深いところである。


ウツ、「次の曲が、新しいシングルのカップリングです。聞いて下さい」と言って、「N43」の演奏に移る。
木根はエレキピアノを担当した。
アウトロではウツがアコギを演奏する。


続いて「Telephone Line」
天井のミラーボールから出るプラネタリウム風の照明が会場を照らす、いつもの演出もあった。
この曲は「Log-on to 21st Century」」「Double-Decade “NETWORK”」に続いての演奏で、なぜか2000年代に高い頻度で演奏された。


3度目のMC。
自分たちも長い間音楽をやって年を取ったという話題で数分を費やした。
サポートメンバーの紹介もこの時に行なわれた。
また初日公演では、アルバムのレコーディングがこの日に終わったことが、小室自身の口から語られた。


「Beyond The Time」
このライブで演奏するとして、事前にアピールされていた曲である。
続いてこの日初めての盛り上がり曲である「Wild Heaven」へとつながる。
実は「Wild Heaven」は、再始動後のTMのライブでは初めて演奏された曲で、「TMN 4001 Days Groove」以来13年ぶりだった。


小室による「CAROL」インスト演奏。
冒頭はピアノで「キヲクトキロク」「unreleased piano version」に準じた演奏を行なう。
ところどころで楽器をピアノからパイプオルガン風の荘厳な音色のシンセに切り替え、メリハリをつける。


途中から曲は「Vampire Hunter “D”」「魔物たちの夜」に変わる。
オルガン音色による緊迫感のあるアレンジで、ここの映像だけでも商品化してほしかったと思う。


その後はまた「CAROL」に戻る。
シンセとハモンドオルガンによる、ロックテイストあふれる攻撃的な荒々しい即興プレイが続く。


「CAROL」が終わると、小室がシンセをゆっくりと弾き始める。
「Memories」だ。
しばらく演奏が続くと、ステージ上が明るく照らされ、北島・吉田・そうるが演奏に加わる。
音は一気に派手になるが、演奏はその後30秒ほどで終わった。
以上一連のインスト演奏は、実に10分以上に及んだ。


以上は11/2の演奏内容だが、11/3にはかなり異なる構成で演奏された。
「CAROL」で始まったのは同じだが、締めの「Memories」はカットされた。
「Memories」は、現在まで2007/11/2しか演奏されていない。


「CAROL」の編成もかなり異なっていた。
ただこの部分は当初から即興要素が大きかったのだろう。
「CAROL」パートの最後には「Messiah」のハレルヤコーラスが挟まれた。
「魔物たちの夜」も前日とは別アレンジで演奏された。
その後は「CAROL」に戻らず、即興演奏が続いた。


当初横浜では、「Electric Music」を演奏する予定もあった。
その場合はこの前後のインストコーナーで演奏することになったのだろう。
本来「楽器フェア」を意識して作った曲だけに、選曲としては妥当なところだったが、結局選ばれることはなかった。
小室がリハーサルにほとんど来なかったため、新曲をソロで演奏するのは難しかったのかもしれない(「Memories」が短時間の演奏になったのも同様の理由か)。


11/2には、インストの後に「Be Together」が演奏された。
だが小室はこの日の公演を終えた後、インストから「Time To Count Down」につなげたいと思い、前後の曲順を変更した。
具体的には、11/2にインスト→「Be Together」「Self Control」「Time To Count Down」だった曲順が、11/3には「Be Together」→インスト→「Time To Count Down」「Self Control」となったのである。
インストから「Time To Count Down」につながる流れは、この後渋谷・武道館でも踏襲された。


11/3には曲順変更に伴い、「Be Together」イントロ冒頭にシンセのフレーズが少し追加された。
またオリジナルに準じた演奏というコンセプトに従い、ライブ定番のイントロのセリフは入らなかった。
「Self Control」「TMN 4001 Days Groove」以来、間奏のフレーズをイントロに持ってくる「Fanks Cry-Max」風のアレンジが長く行なわれてきたが、やはりライブのコンセプトに合わせてオリジナル通りのイントロになった。


11/2は「Time To Count Down」の後、11/3は「Self Control」の後に、そうる透の4分に及ぶ激しいドラムソロが披露された。
歌うようなギターという表現があるが、この時は歌うようなドラムとでもいうべきプレイだった。
個人的に曲のつながりとしては、ドラムを前面に出した「Time To Count Down」からつながる11/2の流れの方がよかったと思う。


ドラムソロに続けて、そうるのドラムでレコーディングされた新曲「Welcome Back 2」が演奏される。
CDで聞くよりもライブの方が映える曲だと思うが、当時のこの曲の評価もあり、本編ラストにもかかわらず客席はあまり盛り上がっていなかった印象がある。


ウツが「どうもありがとう!」と言うと、メンバーはステージから退場する。
数分の客席からのアンコールの声を受けて、再度メンバー登場。
ウツ、アンコールに感謝を述べ、曲に入る。
アンコールは「Get Wild」
事前にアピールされていたオリジナルバージョンである。


曲が終わると、ウツは再度「どうもありがとう!」。
メンバーは退場し、ライブは終わった。
会場には退場曲として未発表曲「You Can Find」が流れた。
一部の観客は、おそらく「SPEEDWAY」収録の曲と気づいたものか、ただちには退場せず客席に残り、曲が終わるとともに拍手を送った。


以上がパシフィコ横浜の「楽器フェア」公演の内容である。
次の11/26・27の渋谷C.C.Lemon公演では、このセットリストに変更が加えられた。
11/22~23頃にリハーサルが行なわれたことが確認され(もっとも後まで行なわれた可能性もある)、追加曲の練習などもこの時に行なったのだろう。


またオリジナルアレンジでの演奏を主旨としていたはずの「TM NETWORK -REMASTER-」だったが、渋谷・武道館では以下で述べるように、軽いライブアレンジが何曲かで施された。
小室も2回の本番をこなし、さらにリハーサルも行なったことで、音をいじりたくなったのだろう。


「楽器フェア」では開演前から客席よりステージの様子を見ることができたが、渋谷公演はこれと異なり、開演前のステージには垂れ幕がかかり、「Welcome Back 2」のジャケット写真がその上に映写されていた。


ライブが始まると、オープニングSEの「EXPO」が流れ、垂れ幕に照明が当てられた。
実は私はこのライブで一番気に入ったのが、この「EXPO」の演出だった。
(1991年に初めて「EXPO」を聞いた頃は、まさかこの曲が良いと思う日が来るとは思っていなかったが…)
会場に数秒「EXPO」が流れると、そのたびに一瞬だけ「Love Train」のイントロのサイレン音が挟まるのである。
サイレン音が鳴る時だけは、ステージ側から照明が当てられ、幕の向こうのシルエットが映し出された。


「EXPO」はアルバム「EXPO」のオープニングSEであり、「Love Train」はその「EXPO」を代表するリードシングルという関係がある。
そこでこの時は、その両曲を合わせた演出をしてみたのだろう。
「Love Train」「楽器フェア」では演奏されなかった曲でもあるから、イントロの断片を聞いた観客は期待を高め、興奮したはずである。
そして何度目かのサイレン音の後で幕が落とされ、「Love Train」のイントロが始まるとともに、ライブ本番が始まった。


歴代アルバムの冒頭のインスト曲をオープニングSEに使う安易な演出は、これまで3回の「tribute LIVE」で常態化していた上、「楽器フェア」でも採用されたが、私は工夫のないこうした演出に辟易していた。
渋谷でもアルバム収録のインスト曲がSEとして使われたのは同じだったが、この時は少しの工夫を施したことで、SEが実に効果を発揮したと思う。


次に演奏されたのは「Come On Everybody」で、やはり「楽器フェア」では演奏されなかった曲である。
また「楽器フェア」はライブの前半がすべてミディアムかバラードだったが、渋谷では冒頭2曲をアップテンポの曲にしてきたため、より盛り上がりやすくなった。


なお「Come On Everybody」「楽器フェア」でも演奏候補曲に入っていた。
「Love Train」も、もともと候補曲に入っていたのかもしれない。


MCが入る。
ウツ、「REMASTERへようこそ!」と挨拶し、改めてシングル満載のセットリストであることをアピールする。
26日には小室と木根からも挨拶があった(27日はウツだけ)。


次からは「楽器フェア」に準じた曲順で演奏していく。
(カットされた「Here, There & Everywhere」「N43」「Wild Heaven」を除く)
まずは「楽器フェア」1曲目の「Still Love Her」
26日にはこの曲でウツのイヤモニにトラブルが発生し、ウツが歌いながらスタッフに指示を出す場面もあった。


ついで「楽器フェア」2・3曲目の「Here, There & Everywhere」「We love the EARTH」を飛ばし、4・5曲目の「Human System」「Seven Days War」が演奏された。
27日には「Seven Days War」のアウトロに小室のシンセパートが新たに加わった。
このアレンジは小室が当日思いついたもので、武道館公演および「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」でも使われたが、なかなか良いと思う。


3人のMC。
小室の妻KCOの実家山田家が運営する料亭山田屋が、2007年のミシュランガイドで2つ星を獲得したことが紹介された。
ミシュランガイドの件は11/19に報道されており、当時ホットな話題だった。


11/12にはKCOの父晋太郎が急死しており、15日にはウツ・木根も臼杵に行って告別式に参加している。
晋太郎を敬愛していた小室にはショックだったようで、リハーサルの直前まで臼杵に滞在し続けた。
そうした中で、ミシュランの件は小室を慰める話だったと思われ、ウツもそのことを忖度して話題に出したのだろう。


MCの後は、先に飛ばされた「We love the EARTH」を演奏する。
2番のサビ前では北島健二のギターソロが挿入された。
このアレンジは武道館でも使われる。
続いて「N43」はカットされ、「Telephone Line」が演奏された。


3度目のMC。
ウツ、「Telephone Line」の話題を木根に振る。
26日には、ウツがこの曲を名曲と言ってほめており、さらに小室も新譜「SPEEDWAY」の木根曲を「ベストですね」とほめあげた。
小室は照れもあったものか、その後にわざわざ「プロの作曲家として…」と付け加え、ウツが笑いながら「ちょっと待って、今までは? セミくらい?」と突っ込む場面もあった。
後述する通り、小室は武道館でも木根をほめており、木根の曲には本当に感心していたのだと思う。
このコーナーでは、サポートメンバーの紹介も行なわれた。


次は「楽器フェア」に準じた曲順で「Beyond The Time」
次の「Wild Heaven」はカットされ、「Be Together」を演奏する。
「Be Together」で11/3に追加されたイントロのフレーズは、11/26にはさらに長くなったが、11/27には無くなった(武道館の演奏でも無い)。


小室と北島・吉田・そうるのインストコーナー。
「魔物たちの夜」「Memories」は演奏されず、「CAROL」のみの短時間の演奏となった。
冒頭は控えめなドラムとピアノ音色のシンセによるシンプルな演奏だが、後半はギター・ベースや派手なドラムを加え、電子音を前面に出した荘重な演奏となった。
後半ではミラーボールの照明が会場を照らした。
このアレンジは武道館公演にも、より派手な形で引き継がれた。


「Time To Count Down」
イントロのピアノソロは、数フレーズごとにブレイクを入れながら演奏された。
さらにハモンドオルガンによる即興プレイも挟むなど、イントロにはオリジナルにない要素が加えられている。


なおウツは27日、この曲のあたりで右足を捻挫してしまったという。
この日は痛みを覚えながらも最後までやり遂げたが、アンコールでステージに登場する時も、足を引きずりながら出てくるあり様だった。
この足の痛みは翌週も続いたが、武道館では足にテーピングをし、靴の中敷きを特殊な形にするなどして、どうにかやり切った。
翌年になっても、痛みはまだ残っていたという。


この後の「Self Control」、ドラムソロ、「Welcome Back 2」の流れは「楽器フェア」と同じである。
なお「Welcome Back 2」のサビでは、ウツがピースサインをしている。
これは実はピースではなく「Welcome Back 2」の「2」を意味しているようである(だっさ!)。
当時の自分のメモでは、渋谷でこれをやっていたことが確認できるが、DVDを見る限りでは武道館ではやっていない(「楽器フェア」については定かでない)
ただ翌年の「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」ではやっている。
武道館のような大舞台ではやりづらかったのだろうか。


メンバーはここで退場するが、まもなくアンコールで再登場する。
この時は小室の49歳の誕生日(11/27)にちなんで、「Happy Birthday to You」の歌が会場に流れ、スタッフによりクリスマスケーキが運ばれてきた。
小室は息でケーキのロウソクを消した。

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26日には小室がケーキのクリームを舐め、木根から「明日も使うんだから食べちゃダメだよ」と言って止められるシーンがあった。
小室によれば、小さい頃からケーキを一人で食べてみたかったとのことである。
この後ケーキを一人で食べたのだろうか…?


27日にはケーキ入刀したものの、固くてうまく切れず、そのまま回収されてしまった。
なお27日には、ライブ後に小室の誕生日を祝う食事会が催された。
この時ウツは小室のためにサプライズで手品師を呼んでいたのだが、小室は手品師が来る前に帰ってしまったという。


しばらく3人で話した後、ウツと木根は退場し、小室が一人でトークを始めた。
この日小室のコーナーが設けられることは事前に告知されていたが、それがここで始まった。
小室のトーク内容は以前書いたことがあるが、以下に転載しておく(11/26)。

えーせっかくこの二日間、たまたまね、誕生日だと思って、特別に10分くらい、時間をいただこうと思います。TMNでもTM NETWORKでも、どっちでもいいんですけども、どうであれ、もうすぐ25歳、TMという名前が付いてから25歳なんですが、そのTM NETWORKやTMN的なこともあっていいんじゃないかというですね、2年くらいですかね、ずっと考えてましてですね、TM NETWORKの子供を作ってみて。3人組の、作ってみました。小室哲哉公認でございますこれは。デビューしてません。ライブしてません。今日初ステージでございます。ツアーではないんですけど、彼らにとっても誕生日を十分もらいましてですね。できればこの子らも、応援してください。で、デビューできなかったりしてね(笑)。まずそんなわけで紹介してみます。3人組です。


この時、小室は3人組の男性グループを紹介した。
グループ名はPurple Daysである。
ボーカル吉田ワタル、キーボード石坂翔太、ギター鈴木俊彦という編成で、結成は2006年のことだった。
Purple Daysはオープニングアクトで演奏させる案や、ライブ本編で突如現れる演出にする案などもあったが、検討の結果アンコールで登場させることになったという。


Purple Daysは舞台袖から現れて自己紹介し、その後2曲のオリジナル曲を演奏した。
1曲は「Shine of Love」、1曲は「あなたが笑う度、恋をする」である。
会場では演奏後に拍手もあったものの、小室コーナーとしてファンの多くが期待していたものと異なるものだったためか、冷めている感は否めなかった。
(新人にしてはハードルが高すぎたとも思う)
木根の「震・電気じかけの予言者たち」を見ても、オブラートに包んだ表現ながら、失敗だったという雰囲気で書かれている。


石坂翔太はM-tresの石坂健一郎の息子で、子供の頃からTMのライブを見ており、幼稚園の頃からTMが好きだったという。
1986年8月生まれなので、「TMN 4001 Days Groove」で7歳、「Log-on to 21st Century」で13歳というところである。
父の縁を通じて小室とも面識があった。
その石坂がバンドを組んだということで、小室に紹介されたのである。


実は小室はこれ以前の2月のFC会報で、TMの活動再開を宣言した時に、「TM Junior」なる20歳の3人組も一緒に動く旨を発言していた。
この「TM Junior」に当たるのが、ほかでもないPurple Daysだった。
小室が上記MCで彼らを「TM NETWORKの子供」と呼んでいるのも、この「TM Junior」構想が元になっている。


小室は会報で、Deep PurpleのようにTMもメンバーが入れ替わる形態もありじゃないかとも発言している。
おそらく小室は、TMの活動にPurple Daysも加わる可能性を考えていたのだろう。
Purple Daysは小室が名づけたものだが、それはDeep Purpleのような活動形態を念頭に置いた命名だったと考えられる。


とはいえ、ウツ・木根が脱退してPurple DaysがTMに参加するというのは現実的ではなく、時々一緒にTMとして活動するという程度の構想だったと思う(そう思いたい)。
活動が停滞した音楽ユニットを盛り上げるために新メンバーを加えるというのは、2002年にYOSHIKIを加えたglobeにも先例があるが、それが失敗した後、TMでもこれに類した活動を考えたものだろうか。


上記MCでは、TM Junior構想が2年ほど前からあったことも知られる。
構想が始まったのがは2005年頃ということになる。
2005年初めには小室抜きで「Spin Off from TM」を開催するに当たり、「TMブランド」という言葉が用いられ、TMのメンバーがそろわなくてもTMのブランドを守っていく(だからTMブランドのために小室がいなくてもtribute LIVEをやる)ことが主張されたが、あるいは小室は、ここらへんから着想を得ていたのかもしれない。


小室の思い付きは、そのままではとても実施しがたいものだったが、渋谷のステージで彼らを紹介したのは、この構想が関わっていると思われる。
またギターの鈴木は、2012年の「Incubation Period」でTMのサポートを務めており、TMの活動への参加も部分的には実現したと言える。
ボーカルの吉田は、2011年の小室ソロアルバム「Digitalian is eating breakfast 2」収録の「L.W.R」にゲストボーカルとして参加している。


小室は当時Purple Daysに、自宅のスタジオを自由に使わせていた。
これは自分がアマチュア時代にジュン&ケイの松村慶子の計らいでスタジオを自由に使わせてもらっていた記憶も踏まえたものだろう。
彼らは2008年春に小室プロデュースでデビューすることが計画されており、その折には小室が契約していたイーミュージックに所属することになっていた。
しかし結局彼らのデビューは延び、デビュー実現の前に小室が逮捕を迎えてしまった。


2009年に小室がavexと専属契約すると、Purple Daysもavexに移籍して、11/25にTSUTAYA限定レンタルシングル「Shine of Love」でプレデビューした(正式なデビューは翌年)。
「Shine of Love」は先述の通り、渋谷で演奏された曲である。
小室はプロデュースしなかったが、シングルのカップリングには小室との縁で、「My Revolution」のカバーが収録された。
(2nd・3rdシングルのカップリングは「I'm Proud」「恋しさと切なさと心強さと」のカバー)
さらに2010/3/17リリースのアルバム「Serendipity」には、「Shine of Love」「あなたが笑う度、恋をする」の他、「Get Wild」のカバーも収録されている。
その後2ndアルバムもリリースされたが、ブレイクすることはなく、2013年を以て解散した。


渋谷公演の話に戻ろう。
Purple Daysが退場すると、小室が拍手しながら再登場し、シンセブースに入って、「GeGeGeGe」のサンプリングボイスプレイ。
「Get Wild」である。
その間に他のメンバーもスタンバイする。


「楽器フェア」ではオリジナル通りの演奏という趣旨を忠実に守ったので、「Get Wild」でもサンプリングボイスは入れられなかったが、この時は冒頭や間奏で派手に入れられ、何度も「GeGeGeGe」が鳴り響いた。
ただし冒頭の「GeGeGeGe」連打の後は、一呼吸置いてからオリジナルのイントロが始まるアレンジになっており、一応オリジナルの痕跡も残されていた。


続いてウツのMC。
「どうもありがとう。それじゃあ、12月5日発売「SPEEDWAY」の中から、1曲聞いて下さい」
最後に演奏されたのは、未発表の新曲「Action」である。
新曲なのに、オリジナルと大きく異なるロック仕様のライブバージョンで演奏された。


オリジナルではサビで小室のボーカルが強調され、落ち着いた雰囲気となっているが、ライブではウツが力強く歌っており(木根コーラス付き)、印象が大きく異なる。
私はこの曲については圧倒的にライブバージョンが好きで、ライブ後はアルバムへの期待感を高めて帰宅したことを覚えている。
そのため後からアルバムを聞いた時には、違和感を感じてしまった。


なおリハーサルの時点では、アンコールの曲順は「Action」の後に「Get Wild」とする案もあった。
だが最後に新曲をアピールして終わるには、「Action」を最後にして正解だっただろう。


演奏が終わると、ウツは「みんなどうもありがとう!」と言って、他のメンバーとともに退場する。
退場曲は「楽器フェア」と同じく「You Can Find」だった。


最後に武道館公演の様子を見よう。
この時のオープニングは、「SPEEDWAY」収録の未発表曲「Malibu」だった。
この曲をBGMとして、ステージ前に掛かった垂れ幕に「Welcome Back 2」のレコーディング風景、CDのプレスの様子、店頭に並ぶ風景が映し出される。


「Malibu」が終わると、「Welcome Back 2」が始まる。
ステージ奥から幕に向かって照明が当てられ、幕の向こうのメンバーの影が見える状態で演奏が始まる。
そして冒頭のサビが終わると、「Get Down」の部分で幕が落とされ、メンバーが姿を現す、という流れだった。


「Welcome Back 2」は、「楽器フェア」と渋谷公演では本編最後に演奏されたが、この時は冒頭で演奏された。
代わって渋谷公演で冒頭に演奏された「Love Train」が、この時は本編最後で演奏されることになった。
この後は渋谷公演の曲順に準じる形でセットリストが組まれており、2曲目は渋谷公演と同様に「Come On Everybody」だった。


ウツMC。
「どうもこんばんは! REMASTERへようこそ! (観客に向かって)元気そうで。元気ですね! TM NETWORKとしてはですね、20周年以来なんで。約3年ぶりの武道館ということで。ありがとうございます!」


そして小室の方を向いて、「リーダーありがとうございます!」とお辞儀。
小室もこれに応じてノリで「ありがとうございます!」と言いつつ、「いつから体育会系になったの?」。
ウツ「いやでも、これはリーダーが一言『やりたい』と言ったことで始まるというね」。
客席から歓声。
小室、また「ありがとうございます!」


演奏再開。「Still Love Her」
続いて木根のアコースティックギターソロ。
11/30に小室から電話で頼まれ、やることになったものだという。
木根がTMのライブでソロ演奏の時間が与えられたのは「Double-Decade Tour」以来だが、この日はその時よりも時間が多く与えられた。
なかなかかっこよい演奏だったと思う。
木根によれば、押尾コータローをイメージしたものだったという。
最後はハーモニカで「Girl Friend」のサビのフレーズを演奏して締めた。


その後は全員で「Human System」「Seven Days War」を演奏し、2度目のMC。
ウツ、木根に「いやーどうですか、木根さん。いきなり武道館、ぶっつけ本番で」と話を振る。
木根は昨日小室から言われてぶっつけ本番でやったと話を盛って答えた。


ウツ「そういうのは昔からうまいですよね」と言うと、木根「瞬間芸の木根尚登と言われました。瞬間だけなら任せてください! ドラムソロだって、十秒くらいだったら」と答える。
会場から「やってー!」と反応があるが、木根は「やらないよ!」と言って拒否。


小室「武道館でギターソロなんて、なかなかできないですから」
木根「できないよ。一生の思い出になりましたよ」
小室「ギターマガジンに一度も載ったことないって言ってたけど」
木根「フォークギターマガジンてのあれば載っているけど」
小室「あのー、人生の彩(いろどり)にね…」
ウツ「(小室の発言を聞いて)なんかなんか、ちょっと危なくない?」
木根「輝かしい歴史を残していきたいなと。よく昔、僕が若い頃、年を取った人が、『一日一日を大事にして』て(言っている)のを見て。なんでだろうと思ったら、今やっと分かりましたよ」


さらに小室が、武道館でギターを弾いた先例として、Deep PurpleのJon Lordの話題を出したところ、木根が「え、ジョン道路?」と聞き返して、小室が「渋谷でそういうしょうもないことを言うのはやめようと言ったじゃないですか」と抗議をする場面もあった。


その後は、TMはこれまでステージでしゃべってはいけなかったという、いつもの話を挟み、「SPEEDWAY」のiTunes先行配信音源がJ-POP部門で1位を獲得したことが、小室から興奮気味に報告された。
小室はこの前日、電話で木根にiTunesのことを伝えたという。


小室は当時、1位なんて取らなくても良いとか言っていたが、1位を取れるとやはりうれしいものらしい。
木根は「(1位を喜べる)この純粋さを忘れたくないよね」と言い、小室は「純粋さを忘れないためにこのアルバムのタイトルをつけたわけですから」とコメントした。


曲に入る。
渋谷ではカットされた「N43」である。
ついで「We love the EARTH」「Telephone Line」


3度目のMC。
ウツが「Seven Days War」について、コーラスの子供たちはもう今頃大人になっているはずという話題を出す。
木根との会話がいまいちかみ合わず、ウツが「聞けよ人の話!このB型が!」と怒るシーンもあった。


ウツが言いたかったのは、もしかしたらその時の子供たちの誰かが今ここにいるかもしれないということだった。
そこでウツは客席に挙手を求めたが、そううまくはいかず、反応はまったくなかった。
会場は微妙な雰囲気になり、ウツは「こんなに静かになったよ」とコメント。


木根は場を取り繕おうと適当な発言を始める。
「あの子たちが、あの時どういう状況で、なんて呼ばれて、どう歌っていたかってことを、認識持っているかどうかだよね。TM NETWORKというグループの歌を歌いに来たとか、(認識)あったのかなあ」
ウツと小室は、ないだろうねと反応。


さらに木根「呼ばれて…」と話を続けようとするが、なぜかその後「飛び出て、ジャジャジャジャーン」と、脈絡もなくハクション大魔王のセリフを言い出す。
またステージは微妙な空気になり、そうる透もドラムを叩き出す始末。
ウツ「ほらすごい、リーダー今怒っていますよ、これ」。
小室は苦笑いしながら、「くっだらない! 来るなあ来るなあと思っていたところで」と吐き捨てた。
木根、「すみません」と言って謝罪。
トークの流れをなんとか挽回しようと頑張った結果なのに、散々である。


以上のどうでもいいやりとりの後、ウツからサポートメンバーの紹介があった。
ウツ、「じゃあ(サポートの)3人で何か1曲」と適当な振りをすると、本当に3人で即興の軽いセッションを始めた(一瞬だけ)。
小室は「面白いね」、ウツは「こういうのいいですね、生っぽくて」とコメント。
小室はさらに、3人はトークも面白いと言って話を広げようとするが、木根が「もういいんじゃないですか、そんないじんなくても」と言って止め、次の曲に入った。


曲は「Beyond The Time」「Be Together」が演奏され、ついで北島健二のギターソロが披露された。
エレキによるシックな渋い演奏である。
続けて小室による「CAROL」のインスト演奏。
演出などは渋谷と同様だったが、渋谷よりも時間を多く取っての演奏となった。
ここから「Time To Count Down」「Self Control」へとつながる流れも、渋谷と同様である。


なおこれまで「Time To Count Down」はライブ定番曲として頻繁に(リリース以来大部分のライブで)演奏されてきたが、これ以後はアレンジを大幅に変えて演奏された2014年の「Quit30」を除き、演奏されなくなる。
おそらくウツの体力の問題もあるのだろう。


そうる透のドラムソロから「Love Train」へ。
「楽器フェア」および渋谷公演ではここで「Welcome Back 2」が演奏されたが、この日は渋谷公演1曲目の「Love Train」と交換となった。


ウツ「どうもありがとう!」
ライブ本編を終え、メンバーはいったん退場する。
アンコールで再登場後のMC。


ウツ「ありがとう! もうすぐ12/5、僕たちのニューアルバム「SPEEDWAY」が出ます。たくさん素晴らしい曲が詰まっていますよね!」
小室、これに対して「詰まっていますね」と答えた上で、「一個だけ言わせてください」とウツにお願いする。


小室「今回木根さんの作曲が5曲ほど入っているんですけど、名曲多いですよ。本当に。木根さんとは30年くらいになりますが、今回のアルバムの楽曲ね、僕は一番好きですね」
木根「ありがとうございます。それでも、作り手には嬉しいですね。昔の方が良かったと言われるより」
小室「いや、ソロにもいい曲いっぱいありますよ。木根バラでしたっけというのもありますし。今回はですね、木根さんかな?ていうくらいですね、一皮も二皮も、三皮くらいむけたと思いますね」


小室に対して、木根は「あの、もう勘弁してください」と照れながら答える。
冷静に聞けば、結構ひどいことも言われている気がするのだが…。
ただ小室がこの時、木根を非常に高く評価していたことは、先掲の渋谷のMCからもうかがうことができる。
一緒に作業をすると、いろんな刺激を与えあえる関係なのだろう。


小室はさらに興奮気味に続ける。
「これはTM NETWORKにとっては、すごいことですよ。画期的なことですよ。宇都宮君にとっても嬉しいことですよ!」
ウツ「どうしてですか?」(会場笑い)
小室「僕の曲は息ができないので」
ウツ「ああ、いち~ず~な~こ~い♪、ですね」
木根「歌ったね、「一途な恋」


ここで一瞬だが、ウツが話の流れで「一途な恋」のワンフレーズを生で歌った。
これが「一途な恋」の生歌(?)初披露かもしれない。
客席から拍手。


小室「ほぼブレスがないんでね」
ウツ「そうですね、もう少しブレス入れて欲しいですね」
小室「木根さんの場合は歌を歌うことを考えて作っているんでね。すばらしい」
木根「いや、至って普通だと思いますよ?(←その通り) ぼく、息を吸いながら作っているんで。(小室は)息吸っていないんだ?」
ウツ「息吸っていないんだ」
木根「息吸ってないで作れるんだよね」


小室はウツ木根の突っ込みを気にせずマイペースに、アルバムを早く聴いてみて欲しいとアピールし、5つ星の作品だと言って木根の曲をさらにべた褒めする。
木根はこれ以上の作品はもう作れないということで、「これを以て引退させていただきます」とコメント。
観客からは「えー」の反応。


以上のようにアルバムの宣伝をした後、ウツは「じゃあその「SPEEDWAY」の中から一曲」と言って、うまく演奏につなげようとしたが、そこで小室は「この曲は僕の曲ですけどね」と、なぜか余計な一言を挟む。
木根「なんだよ今までのフリは!」「なんだ(俺の曲は)聞けないんだ!」と突っ込みを入れる。
木根の言うことはとてもよく分かるが、「N43」を演奏したということで、木根さんご勘弁下さい…。


曲は渋谷と同じく「Action」
その後は渋谷でカットされた「Wild Heaven」を演奏し、メンバーは再び退場した。
だが退場曲が流れないことで、観客もこれで終わりではないと気付いただろう。
二度目のアンコールの声が客席から鳴り響く。


小室が舞台袖から登場。
グランドピアノの前に座って「Get Wild」のイントロを弾き、続けてシンセでジャジャジャジャのフレーズと「GeGeGeGe」のフレーズの連打を行なった。
TMでは珍しいダブルアンコールに盛り上がる観客。
他のメンバーも登場して、「Get Wild」の演奏を行なった。


演奏が終わると、ウツ恒例の「どうもありがとう!」。
サポートメンバーを含めた6人はステージ前方に並んで観客に挨拶し、退場する。
退場曲はそれまでと同様に「You Can Find」だった。


以上が「TM NETWORK -REMASTER-」5公演の内容である。
最後にセットリストの変遷を以下に挙げて、本章の締めとする。

11/2パシフィコ横浜11/3パシフィコ横浜11/26・27C.C.Lemonホール12/3日本武道館
(nuworld)(EXPO)(Malibu)
Love TrainWelcome Back 2
Come On Everybody
Still Love Her
Here, There & Everywhere木根ギターソロ
We love the EARTH
Human System
Seven Days War
N43N43
We love the EARTH
Telephone Line
Beyond The Time
Wild Heaven
Be Together
北島ギターソロ
CAROL
魔物たちの夜
Memories
Be Together
Self Control
Time To Count Down
Self Control
そうる透ドラムソロ
Welcome Back 2Love Train
(以下アンコール)
Shine of Love(Purple Days)Action
あなたが笑う度、恋をする(Purple Days)Wild Heaven
Get Wild
Action
(You Can Find)


TM NETWORK -REMASTER- at NIPPON BUDOKAN 2007 [DVD] - TM NETWORK, TM NETWORK
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7-37 TM NETWORK -REMASTER-①

2/27と3/6、ウツと木根さんがニコ生に出演しました。
2/27は「tribute live SPIN OFF T-Mue-needs Tour Blu-ray」視聴会、3/6は「年忘れ!!歌酔曲vsフォーク〜ハタシテ?ドチラが勝つでショー〜!」視聴会です。
FC盤Blu-rayの申込締切が3/7のため、その販促のために企画されたものです。
また4月から開催される「K-Folk 2021」と5月から開催される「LIVE UTSU BAR 2021〜それゆけ歌酔曲!〜」の宣伝も行なわれました。


内容はウツと木根さんがライブ映像を見ながらコメントをするという、他愛もないものですが、意外と知らなかったネタも出ました。
たとえば「CAROL Tour」で当初は松本孝弘さんが空を飛んで襲い掛かってくる演出が想定されていたのに(松本さんは悪魔役なので自然な設定です)、事務所から制止されたため、木根さんが空を飛んでキャロルを救いに来る演出に変わったという話などは、多分これまで出たことがなかったのではないでしょうか。
(追記:本記事のharuさんコメントによれば、すでに語られていたようです)


木根さんが高校卒業後に開催したプログレのソロライブというマニアックな話題も出ましたが、この時はウツもアコギとコーラスでサポート参加したそうです。
ウツがコーラスで木根さんがメインボーカルのライブだったんですね。


最近の話では、本来「年忘れ!!歌酔曲vsフォーク」で小室さんが参加するのは1曲だけだったけれども、「あの素晴らしい愛をもう一度」でも参加することが、当日のリハーサルで決まったということが分かりました。
小室さん、出たかったんでしょうね(笑)
番組の最後には木根さんが、次回は小室さんも含めた3人で出たいと言っていました。


2/24には「Digitalian is eating breakfast Special Edition」「tk-trap Re:2021」がリリースされました。
意外なことに「Digitalian is eating breakfast Special Edition」は、2/23付けアルバムデイリーチャートで8位、2/24付けで40位を獲得しました。
週間チャートでは19位・2714枚です。


また「tk-trap Re:2021」は、2/23付け音楽BDデイリーチャートで3位、翌日も8位に入りました。
週間では4位・1318枚です。
マジですか!?
まあ冷静に見れば、売上自体は大したことないんですが、ランキングだけならなかなかのところに行きました。


最後に、2/26に山田桂子氏がavexのサイトで直筆メッセージを公開し、小室さんとの離婚が成立したことを発表しました。
すでに2019年には離婚協議に入っていることが報道されており、同年10/21に5回目の調停が行なわれていたとされています。
調停は26ヶ月にわたり行なわれたとも報道されていますので、調停期間は2019年1月から2021年2月ということになります。


報道後小室さんがどれくらい叩かれるかと危惧しましたし、実際にゴシップ誌は盛んに書きたてましたが、話題としても賞味期限を過ぎたのか、大して盛り上がらなかった印象です。
本件がすっきりしたことで、小室さんが音楽活動に専念できる環境が整えば嬉しいです。
あと決着がついたことですし、小室さんにこれ以上圧力をかけても取れる金額が増えるわけではないので、先方の方々もゴシップ誌にネタを提供し続けることは、いい加減にやめてほしいものです。


今回小室さんは、相応の財産分与を行なったと報道されています。
2008年の逮捕時に松浦さんに負った借金の返済は2023年となっていますが、その返済はちゃんとできるのでしょうか。
小室さんには、なにとぞお仕事を頑張っていたただければと思います。できればTM中心で。
まとまった収入を期待できるコンテンツとなると、結局TMが一番有効と思うんですよね。


以上、近況の整理でした。
それでは本題に入ります。

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これまで触れてきたように、2004年以来止まっていたTMが動き出したのは、2007/11/2・3にパシフィコ横浜で開催される「楽器フェア 2007」のライブイベントへの出演打診がきっかけだった。
このライブは8月には、「TM NETWORK -REMASTER-」というタイトルで発表された。


2004年のTM20周年では、SONYから過去音源がBOXやベスト盤の形で再発売され、2007年にもBOX収録のアルバムのバラ売りが行なわれた。
これら音源は再マスタリング処理が施され、それは「リマスター」と呼ばれた。
この頃はTMに限らず過去作品の「リマスター」盤再発がよく見られたが、それをこの時はライブタイトルとして取り入れたのである。


それまでTMのライブは、「終了」ライブという特殊な位置づけだった「TMN 4001 Days Groove」を除き、スタジオのオリジナル音源とは大きく異なるアレンジで演奏されるのが常だった。
2004年の「Double Decade “NETWORK” in YOKOHAMA ARENA」に始まる20周年ライブも、過去曲の多くがトランスアレンジで演奏された。
これらはいわばライブ用の「リミックス」というべきものであり、それがTMライブの醍醐味でもあった。


ところがこの時掲げられたのは、「リミックス」ではなく「リマスター」だった。
このタイトルは、オリジナル音源にライブ用のアレンジを加えるのではなく、原曲のアレンジを高音質でリスナーに届けることを目指したものと解することができる。
たとえば小室は2007/9/20「スポーツ報知」の記事で、以下のように語っている。

一連のコンサートでは、オリジナルバージョンのアレンジや演奏に重点を置き、楽曲のポテンシャルを引き出す方向で考えています。 みなさんが知っている曲を知っているアレンジで連発する予定でいます。


実際に「楽器フェア」(以後「TM NETWORK -REMASTER-」パシフィコ横浜公演をこのように表記)では、楽曲のライブアレンジが大幅に加えられることはなく、原曲に準じたアレンジで演奏された。
この頃は「Get Wild」がオリジナルのままで演奏することもアピールされた(変わったアピールだと思う)。


またもう一点、「みなさんが知っている曲」から選曲するという方針も示されている。
誰が来ても楽しめるように、メジャーな曲でセットリストを組み立てるヒットメドレー形式を採るということである。
この方針は、定番曲をほとんど排し新曲を軸に据えた「Tour Major Turn-Round」などとは大きく異なるものである。


こうした方針になったのは、アルバムリリースを前提とせずに企画されたライブだったこともあるだろう。
シングル「Welcome Back 2」はライブ開催直前にリリースされたが、これだけではライブの軸とすることはできない。
ヒットメドレー的ライブになることは必然的だったともいえる。


小室は当時のインタビューで、「せっかくやるならみなさんに喜んでもらえるものをやろうと思った」とも発言している。
この方針は、「みなさんが知っている曲」という基準から分かるように、小室の目指す音を提示するというものではなく、観客の求めるものに応じようとするものだった。
こうした方針を採用したのは、「自分が好きなロックバンドのライブDVDを観ても、コンサートに行っても、知っている曲が次々に出てきた方が圧倒的に楽しいから」という理由だと、小室は語っている。


木根が8月のライブMCで語ったことによれば、小室はChage & Askaのライブを見に行ったが、知らない曲ばかりでつまらなかったと言っていたという。
これは7/22にNHKホールで開催された「Tour 2007 Double」のことと考えられる。
ニューアルバム「Double」を軸にしたツアーだった。
おそらくこの体験に基づいて、小室は「みなさんが知っている曲」という基準を作ったのである。


小室がこれまで自分がやりたい音楽に徹底的にこだわってきたことを考えると、この時の基準はいかにもファンにおもねったものという印象を受ける。
小室は自信を失い、何をやるべきかを自らの音楽的関心からは提示できない状態だったのかもしれない。


この時に選曲されたのは、大部分が1987~88年の楽曲だった。
「楽器フェア」で演奏された曲を見ると、非インストの14曲中、9曲がこの時期の楽曲である。
特にこの時は、「Beyond The Time」を演奏することがアピールされた。
意外なことに、この曲のライブ映像は、これ以前に一度も商品化されていない。
知名度の割には演奏頻度が低かったことも事実で、これを聞きたいというファンの声もあったのだろう。


他に演奏されたのは、TMN時代の3曲(1990~91)と、ニューシングル「Welcome Back 2」およびそのカップリング「N43」である。
1986年以前の楽曲や、新曲以外の再始動後の楽曲は1曲もない。
その長いキャリアにもかかわらず、1987,1988,1990,1991,2007の5年間に発表した曲だけでライブを行なったことになる。


要するに「楽器フェア」は、TMが売れていた時代を重点的に振り返るライブだった。
この点は、「Welcome Back 2」のコンセプトに通じるものでもある。
なお実際には演奏されなかったが、「Dreams of Christmas」も候補に挙がっていたことが知られる。
同じクリスマスソングの「N43」とセットで演奏する計画だったのだろうか。


もう一点、このライブについて触れておかねばならないのは、小室の関与の少なさである。
本ライブのリハーサルは10/27~31に行なわれたが、小室はあまり現れなかった。
曲順を決める段になってもいなかったため、リハーサルは難航したらしい。
おおまかな演奏曲候補は3人で考えていたのだろうが、細部についてはリハーサルスタジオで詰める予定になっていた。


これは小室がサボっていたのではなく、前回の記事で触れたように、「SPEEDWAY」のレコーディングのためである。
本来「SPEEDWAY」は10/20以前にレコーディングを終えているはずだったが、これを1週間過ぎても終わっておらず、TMはレコーディングとリハーサルを同時にこなさざるを得なかった。
特に音源作りを担当する小室は余裕がなかった。


小室は10/28には体調を崩して病院に搬送され、翌日もリハーサルに顔を出さなかった。
この間はウツがその場を仕切ることになった。
その後もリハーサルの期間はもちろんのこと、ライブ当日の早朝までレコーディングは続いた。
満足なリハーサルが終始できなかったことは推測できる。
「楽器フェア」で演奏ミスが目立ったのも、これが一因だろう。


こうした中で用意されたライブ音源の作成に、小室が深く関与したとは考えられない。
おそらく音源作りはスタッフに丸投げであり、ライブ当日の事前リハーサルで微調整を加える程度だっただろう。
これは原曲通りに演奏するというコンセプトだからこそ可能だったとも言えるが、逆にいえば小室はこのコンセプトを提示した時点で、音源制作はスタッフに丸投げするつもりだったのかもしれない。


TMは前回の「Double-Decade “NETWORK”」ではバンド色を排し、葛城哲哉のギターを除くほぼすべての音を小室がリアルタイムミックスによって制御するという、挑戦的な試みを行なった。
だが「楽器フェア」では生のギター・ベース・ドラムが加わり、一般的なロックバンド編成によって演奏された。
その点では「Double-Decade “NETWORK”」の前に開催された「Tour Major Turn-Round」に近いものになったと言える。


以上のように「楽器フェア」は、オリジナルアレンジ・著名曲中心・音源制作丸投げ・バンド演奏という特徴を持つライブだった。
この特徴から受ける印象は人によって異なるだろうが(たとえば著名曲中心というのは歓迎する観客もいただろう)、私としてはバンド演奏という要素以外については、久しぶりのライブだったのに非常に残念な思いを感じたというのが正直なところである。


ただオリジナルアレンジでの演奏については、おそらく前例があった。
これ以前の2003~07年に開催された「tribute LIVE」「Spin Off from TM」「Spin Off from TM 2007」である。
これらのライブは過去の楽曲の魅力を伝えるために、TM楽曲をオリジナルのままで演奏するというコンセプトだった。
「楽器フェア」のライブスタッフも中心はウツ事務所のM-tres関連者で、「tribute LIVE」等と同じだったと考えられる。


小室に積極的なプランが浮かばず時間もあまりなかった中で、この頃ウツ・木根によるオリジナル演奏のライブが常態化していたことは、ライブの構想に当たり参考にされた可能性がある。
しかもそうしたライブツアーが3回も開催されたことから分かるように、これを支持するファンも少なくなかった。
TMの活動が行なえない間のつなぎとして開催されてきたtribute LIVEの形式が、本体のTMの活動に影響を及ぼしてしまったということもできる。


セットリストは、オープニングでインスト曲をSEとして流し、2~3曲ごとにMCを挟み、インスト曲の後で最後の盛り上げ曲を続けて演奏するという、tribute LIVEと同様の構成だった。
これはウツ・木根中心で曲順を決定したことによる必然的なものといえる。
その意味でも本ライブはtribute LIVEの延長としての性格がある。


ライブの時間は100分超に過ぎなかった。
この間にMCやアンコール待ちの時間もあったので、実質的な演奏時間は80分程度である。
再始動後は「Tour Major Tunr-Round」「Double-Decade “NETWORK”」などでも短時間のライブが続いていたが、それでも2時間近い時間は確保されていた。


「楽器フェア」と同程度の公演時間だったライブとして、「Log-on to 21st Century」があるが、後者が短時間になったのは、本来対バンとして企画されたものがワンマンライブに変更されたという事情もあった。
「楽器フェア」はこうした特殊なライブと同程度の短さのライブだった。


ただしこれはTM側の事情というよりも、「楽器フェア」主催者側の事情で、公演時間が制限されていたものかもしれない。
後述の追加3公演では、いずれも2時間近い公演時間となっている。


演奏曲数はインストを除き14曲である。
「Double-Decade “NETWORK」「Double-Decade Tour」は16曲、「Double-Decade Tour Final」は17~19曲であり、しかも長大なライブアレンジが施された曲も含まれた。
これらと比べると「楽器フェア」は、やはり物足りないライブだったと言えるだろう。


さて、TMの活動再開に当たって本来予定されていたのは、出演打診を受けた11/2・3の「楽器フェア」だけだった。
だが前章までで見てきたように、TMはこれを引き受けた後、シングル・アルバムのリリースを決定した。
おそらくこれと合わせて、「楽器フェア」以外のライブも開催することになったらしい。
ライブタイトルを単に「楽器フェア」とせず、「TM NETWORK -REMASTER-」という独自のものを付けたのも、おそらくこのことと関わるだろう。


9月半ばには3人のFCで、シングル「Welcome Back 2」のリリースおよび11/26・27の渋谷C.C.Lemonホール公演と12/3の日本武道館公演の開催が発表された。
結局「TM NETWORK-REMASTER-」は、「楽器フェア」も含めて全5公演となり、すべて首都圏で開催された。
小室や木根は「REMASTERツアー」と言っており、ライブツアーという認識だった。


渋谷公演と武道館公演のセットリストは、横浜の「楽器フェア」から変更になった。
具体的にはライブのオープニングSEが、「楽器フェア」「nuworld」、渋谷公演は「EXPO」、武道館公演は「Malibu」となった。
また「楽器フェア」の演奏曲の内、渋谷公演では「Here, There & Everywhere」「N43」「Wild Heaven」の3曲が除かれ、代わりに「Love Train」「Come On Everybody」「Action」が追加された。
武道館では以上の入れ替わり6曲の内、「Here, There & Everywhere」を除く5曲が演奏されたため、演奏曲数としては2曲増えた。


特に変わった演出があったのは渋谷の2公演である。
この2公演は小室の誕生日11/27に前後して設定されたが、小室はサプライズのバースデーケーキなどはいらないから、好きなことをできる時間をプレゼントして欲しいと、スタッフに交渉した。


小室がこの時間で行なったのは、当時小室がデビューさせようとしていたバンドPurple Daysの出演だった。
彼らはこれがバンドとして初めてのプロのステージだったと考えられる。
この時はオリジナル曲「Shine of Love」「あなたが笑う度、恋をする」の2曲を披露している。


なお渋谷公演でのTMの演奏曲数は「楽器フェア」と同じだったが、Purple Daysの2曲があったため、時間は合計2時間程度になった。
武道館も公演時間は同じ程度だったが、Purple Daysの2曲が削られた代わりに、TM曲が2曲増えた。


「TM NETWORK -REMASTER-」5公演では、いずれも凝った演出は見られなかった。
ただ渋谷・武道館公演では、ステージの後ろにタイムマシーンを意識したと思しき巨大な時計のオブジェが置かれた。
これは「SPEEDWAY」のジャケットにも見られるもので、翌年の「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」でも使われた。
ライブパンフレットは「楽器フェア」では作られなかったが、渋谷・武道館公演では販売された。
内容は、「楽器フェア」の写真・レポートを中心にしたものである。

7-37.jpg

サポートメンバーは、ギター北島健二、ベース吉田建、ドラムそうる透である。
北島・吉田は2002年のイベント「Laugh & Peace Premium Night」でもサポートを務めたことがあるが、吉田はフルライブでのサポートは初めてである。
北島は「4001 Days Groove」「Double-Decade Tour Final」でサポートを務めたことがあるが、前者は葛城哲哉との共同サポートで、後者は冒頭6曲とアンコールのみのサポートだった。
北島とTMの長い交友関係を考えると少々意外だが、TMのフルライブを通して1人でギターを担当したのは、この時が初めてと思う。


そうる透は「Welcome Back 2」のレコーディングにも参加しており、その縁でサポートを依頼されたものだろう。
THE ALFEEのサポートなどを務めてきたベテランドラマーで、実は小室と同い年である。
ライブでは強く主張するドラムプレイを披露したが、これは生ドラムのなかった「Double-Decade “NETWORK”」と比べると、大きな相違点である。


このサポート陣は、それまでのTMのライブとはかなり様変わりしたものとなっている。
北島とそうるは翌年の「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」でもサポートを務めており、この時期の音を特徴付けていると言って良い。
なおギターのサポートは、葛城哲哉が1990年の「Rhythm Red Tour」以来、すべてのフルライブで担当してきたが、この時から外れることになった。


ライブステージ上の配置は、客席から見てウツが前方中心におり、小室が右、木根が左である。
小室と木根の位置は「Log-on to 21st Century」「Tour Major Turn-Round」と逆で、「終了」前の配置に戻った。
ステージ後方には、中央にそうる透、右に吉田、左に北島がいた。
これは横浜・渋谷・武道館に共通である。


衣装は各会場で変化した。
「楽器フェア」では、ウツが黒のシャツの上に赤茶のジャケット、小室が白の半袖Yシャツの上にベージュのジャケット(ジャケットは途中で脱ぐ)、木根が黒地に柄付きのTシャツの上に黒のポイント入りの白いジャケットを羽織った。
木根は普段と雰囲気の異なるサングラスをかけており、一瞬電撃ネットワークの南部虎弾に見える。
風貌としては、3人ともイケていると思う。


渋谷公演は、木根は横浜と同じ衣装だったが、小室はカジュアルな黒地のシャツの上に黒のジャケットを羽織り、ウツは銀色のコートを羽織っている。
武道館では、ウツ・木根は渋谷と変わらなかったが、小室は渋谷とは異なるフォーマルな仕様の黒ジャケットを羽織り、下にはフリル付きのシャツを着ている。


本ライブについてもっともまとまった資料は、DVD「TN NETWORK -REMASTER- at NIPPON BODOKAN 2007」である。
武道館公演の様子を全編収録したもので(ただしMCは一部カット)、通常盤はR&Cより2008/4/2にリリースされた。
今後触れるタイミングもないので、ここで本商品にも言及しておこう。


本作のジャケット原画は「Welcome Back 2」と同じものだが、「Welcome Back 2」とは別の部分(下の部分)をトリミングして用いている。
ライブ映像の他にボーナストラックがあり、「SPEEDWAY」のMV2種(BGMは「Action」)、「Welcome Back 2」MV、ライブリハーサルのダイジェスト映像(BGMは「Red Carpet」)が収録されている。


本作にはFC限定版も存在する。
こちらはライブの様子を撮影したブックレットおよびドキュメントDVD「TM NETWORK Document 2007 Kick Into Action」が同梱されている。
非常にいやらしいことに、FC盤には通常盤のボーナストラックが収録されていないため、すべての映像を入手したい場合には、数分のボーナストラックのために5000円(税別)で通常盤を購入しなくてはならなかった。


「Kick Into Action」「Welcome Back 2」のリリースから渋谷公演に至る日々のドキュメント映像を収録したものである(2007/9/16~11/27)。
この時期のレコーディングの過程は他の時期と比べて情報が少ないため、貴重である。
本ディスクには11/2「楽器フェア」オープニングの「nuworld」と、11/27渋谷公演の「Action」の様子も収録されている。
両公演の映像が商品化しているのはこれだけである。


2007/12/23にはTV番組「みゅーじん」で、TMの活動を追った特集が組まれた。
映像の素材は「Kick Into Action」と同じものを使ったと思われるが、使われている映像はほぼかぶっておらず、これも貴重な情報源である。
番組では特に「You Can Find」制作の過程に焦点を当てているが、ライブ映像としても「楽器フェア」から「Be Together」「Get Wild」、武道館公演から「Love Train」「Seven Days War」「Get Wild」「Action」をそれぞれ一瞬放送している。
「楽器フェア」の演奏シーンは「Kick Into Action」にはなく、これ以外で見ることはできない。


以上が、「TM NETWORK -REMASTER-」の概要である。
具体的なライブの内容については、次章で扱うことにしたい。

TM NETWORK -REMASTER- at NIPPON BUDOKAN 2007 [DVD] - TM NETWORK, TM NETWORK
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7-36 SPEEDWAY(Album)

2021/2/6にニコ生で、「Tetsuya Komuro Music Festival」配信されました。
18:00から配信開始で、クラムボンのミトさんとふくりゅうさんをMCに、1時間ごとにランキング発表&ゲストトークが行なわれました。


番組は1時間ごとにゲストを変えて、MCと一緒に小室楽曲を語るというものでした。
ゲストは18:00~19:00が木根さん、19:00~20:00が住吉美紀さん、20:00~21:00がDJ KOOさんです(KOOさんは最初から最後までいましたけど)。
ここまででランキングは6~40位が発表されていましたが、いよいよあと5曲を残すところになって、21:00から小室さんが登場しました。


当初番組は22:00まで放送し、22:30~26:00にランクインした40曲を配信する予定になっていました。
ところが小室さん登場後のトークは、ニコニコ動画プレミアム会員限定の時間を含めて、結局23:30頃まで続きました(楽曲配信は27:00前まで)。
小室さん自身、今日はいっぱい話したいと発言するなど、意欲を見せていました。


プログラムを見るに、おそらく22:30頃までプレミアムという予定だったのでしょうが、結局5時間半の長丁場になりました。
ミトさんはスタッフから時間超過もOKと言われていたそうなので、トークが盛り上がって長引くのは歓迎というスタンスだったのでしょう。
小室さんの出演時間は2時間半近くで、12月の「SF Rock Station」を越える時間となりました。


ランキングは中間発表から大幅に変わりました。
1位の「Get Wild」は中間発表と変わりませんでしたが、2位の「永遠と名づけてデイドリーム」と3位の「Can You Celebrate?」は中間発表ではそれぞれ17位・21位で、大幅にランクアップしています。
他に躍進した曲としては、6位の「I'm Proud」(中間発表14位)の他、11位・12位・18位の「Crazy Gonna Crazy」「I Believe」「Be Together(鈴木あみ版)」は、中間発表では30位圏外でした。


逆に中間発表では5位だった「I am」は、なんと40位圏外です(40位の「炎」より下です)。
これが集計ミスでなければ、中間発表5位の票数が最終発表40位にも届かなかったことになり、かなり多くの(大多数の)ファンが中間発表の時点では様子見をしていたことになります。
中間発表18位の「Electric Prophet」もありません。


全体の傾向として、中間発表ではTMの楽曲が上位を占めていたのに対し、最終発表ではプロデューサー期の有名曲がランクを上げた印象です。
TMファンは企画開始早々投票した方が多かったのでしょうか。
結果としては一般の認知度に近いランキングになったと思います。
中間発表で「Can You Celebrate?」が21位だったのは、私も目を疑いましたし(別に好きな曲じゃないですが)。


なおランキング中のTM率は、中間発表では全30曲中10曲でしたが、最終発表では全40曲中8曲で、33%から20%に激減しています。
トップ10内については、中間発表では5曲入っていたのが、最終発表では3曲です(1位「Get Wild」、8位「Human System」、10位「Self Control」)。


今回は長時間だったこともあり、色々な話題が出ました。
特に小室さんのトークでは、初耳のこともありました。
最近のシティポップブームを意識してのことでしょうけど、「Gravity of Love」はシティポップを意識して作ったという話なんて、今まで出たことはなかったと思います。
さらにTMでもシティポップをやろうと思ったことがあったそうです。
一体いつのことなんでしょうね。


また気になったのは、小室さんが初めてシンクラヴィアを見たのがニューヨークのNile Rodgersのスタジオだったという発言です。
その後で東京にも持っている人がいたことを知ったとも言っていましたが、これは1988年8月にロンドンから一時帰国した時に日向大介さんに会ったことを言っていると思われますから、小室さんがNile Rodgersのスタジオに行ったのはこれ以前のはずです。
一体どのタイミングだったのでしょうか。


小室さんが海外に行った時期としては、1987年9月に「humansystem」のレコーディングをロスアンゼルスで行なっていますし、1988年4~10月にはロンドンに移住しています。
ただいずれもニューヨークまでは距離があり、それなりの日程を組まなければ行けなかったはずです。
裏付けになる当時の記録があれば何か良いのですが(未調査)。


小室さんが「Running To Horizon」の新たなリミックスバージョンを発表してくれたのは、今回最大のサプライズでした。
ニコ生出演が決まった後に、SONYからマスターテープを借りて作ったそうです。
この件は配信前日に自らのInstagramで言及していたので、チェックしていた方は予想していたと思いますが、私は気づいていなかったので驚きました。


このテイクのタイトルは、ふくりゅうさんによって「アドリブピアノミックス」と紹介されました。
オリジナルテイクからいくつかの音を除き、ジャジーなピアノ音色のシンセを重ねていました。
なかなか趣きのあるアレンジと思います。
小室さんは、目の前で聞いている感じの音にしようと思ったそうです。
こちらは現在は商品化の予定はないようですが、今後何らかの特典として発表されるかもしれません。


また番組の最後には、小室さんによるピアノの即興演奏が披露されました。
「Human System」「Self Control」「Beyond The Time」のフレーズをちょっと弾いた後、「Dawn Valley」「Seven Days War」を演奏し、最後に「Precious Memories」で締めました。
実に9分以上に及ぶ演奏でした。
最後の曲を除き、全部TM曲だったのは嬉しかったです。


画面には映りませんでしたが、ミトさんによれば、最後はスタッフもすすり泣いていたそうです。
小室さんの復活は、ファンに限らず関係者も待望していたのでしょう。


小室さんによれば、それまで音楽の価値が水よりも安くなってしまったと思っていたけれど、今回のコロナ禍の中、音楽は必要だと言ってくれる声が増えてきたと感じ、自分も役に立ちたいと思って活動を再開したとのことです。
意外なことに、未曽有の災害がむしろ小室さんを奮い立たせたのですね。


これまで小室さんのイベント出演は何度かありましたが、現状で発表された新曲は、7月復活時の「Route246」「Dreamed a Dream」の2曲しかありません。
しかしその後も楽曲制作は続けているとのことでした。
発表のタイミングを待っているのでしょう。
今後の活動については、考えていることはあるけれども、具体的には何も動いていないとのことでした。


TMをやりたいという気持ちも語ってくれました。
これもタイミング次第とのことです。
木根さんもTM再開の意志を述べていましたし、本当に何かきっかけがあればTMが始まるのだと思います。
順調にいけば今年中には何かあるんじゃないかと感じています。
とりあえずコロナ禍に先が見えた頃に発表になるんじゃないかと、期待しておきます。


なお今回の各ゲストは、一番好きな小室楽曲が尋ねられましたが、木根さんは渡辺美里さんの「My Revolution」でした。
ウツは番組に送ったメッセージの中で、中山美穂「JINGI・愛してもらいます」、中森明菜「愛撫」、宇都宮隆「discovery」を、小室楽曲ベスト3として挙げました。


また今回、小室さんの出演は21:00過ぎからでしたが、実は早くから来て楽屋にいたそうで、木根さんともずっと話していたそうです。
木根さんは19:00過ぎに退場しましたから、もしかしたら2時間くらい喋っていたのかもしれません。


小室さんは番組終了後、最近注目されているSNSメディアClubHouseで配信を行ないました。
ニコ生の待ち時間にアカウントを作ったそうで、本当に急に決めたようです。
その後は連日ClubHouseに出没し、演奏しているみたいです。
個人的にはtwitterよりも小室さんに向いているんじゃないかと感じています。
いや、私はAndroid使いなのでiphoneアプリのClubHouseは使えないんですけどね…。


ところで、これまで小室さんは主な発信手段としてInstagramを使っており、@tetsuyakomuro_officialと@tk19581127の2アカウントを持っていました。
前者は去年の復帰に合わせて2020年9月に開設されたアカウントで、MusicDesign株式会社を拠点としたイベントの広報などを行なっていました。
MusicDesignerという新たな肩書もここでアピールされました。
これに対して前者は2017年末まで使われていましたが、2018年の引退後は更新が止まり、2020/3/12にはフィリピンの写真を投稿しましたが、それ以外では使われていませんでした。


ところがおそらく今回のニコ生配信の直前になって、前者が@tetsuyakomuro_music、後者が@tk19581127_officialに改称されました。
前者のアカウント名から「official」が消え、後者のアカウント名に「official」が加わったわけです。


前者のプロフィールからはMusicDesignerの肩書が消され、後者の旧アカウントに「オフィシャルリンク」としてリンクが張られています。
小室さんは何らかの事情があって、去年開設の新アカウントから旧アカウントに、オフィシャルアカウントを変更したようです。
詳しい事情は不明ですが、去年の復活時のプランに変更が加えられたようです。


小室さんは去年10月まではMusicDesignを拠点とした活動を行なっていましたが、今はそれとは別の形での活動を考えているのでしょうか。
12月からウツや木根さんと絡むようになったのも、そのことが絡んでいるのかもしれません。
だとするとこの一連の動向は、小室さんがTMの活動に向けて動き出したことを反映しているとも考えられます。


なおMusicDesign絡みと考えられる案件としては、公式twitter(2020/9/11開設)で11/30に須賀洋介シェフとのコラボプロジェクトが告知されたのが最後です。
twitterでもinstagramでも、12月以後の活動はMusicDesignからは広報されていません。


ニコ生配信の中では、木根さんのライブ「K-Folk 2021」の開催が発表されました
日程は4/10・11で、ウツもゲスト出演します。
年末の「年忘れ!!歌酔曲vsフォーク 〜ハタシテ?ドチラが勝つでショー〜」のようなライブをまたやるのでしょう。


さらにウツソロツアー「LIVE UTSU BAR 2021〜それゆけ歌酔曲!~」の開催も告知されました。
日程は2/13に、5/25~7/6と発表されました。
「実は2020年用意してた新曲もやるかも!?」とのことです。


会場は東京・名古屋・大阪のみで、しかも10公演中6公演が東京のEX Theater Roppongiです。
コロナで人が集まらないという判断でしょうか。
多分恒例のニコ生配信もあるから、地方のファンはそちらからリモート参加ということになるのでしょう。
「K-Folk 2021」もEX Theater Roppongiなので、ウツは4~7月に8回EX Theater Roppongiに出演することになります。


すでにリリースが告知されていたBlu-ray「Spin Off T-Mue-needs」の詳細も発表されました。
FC限定版は13500円(税込・送料別)で、3/7までwebshopで申し込みの受け付けが行なわれています。
発送は4月下旬とのことです。
通常版もおそらく同じ頃にリリースとなるでしょう。


通常盤は2020/12/2の最終公演が完全収録となるようです。
さらにFC盤にはボーナスディスクが付き、全公演から1曲ずつ(セミファイナル12/1公演のみ2曲)収録されます。
日替わり曲も全部入ることになります。
全日程配信して映像素材が揃っているからこそできることですね。
ああ、こういうのが80年代に出来ていればなあ…


大変嬉しいことに、ボーナスディスクには年末の「年忘れ!!歌酔曲vsフォーク」から、3人で演奏された「Time Machine」も収録されます。
演奏名義も「TM NETWORK」となっています。
FC会員しか入手できない恨みはありますが、記念の映像になりそうです。


なお小室さんはニコ生で、この時の「Time Machine」は1994年の「TMN 4001 Days Groove」の時よりも良かったと言っていました。
きっと3人で演奏できたことが嬉しかったんでしょうね。


近況整理が長くなりましたが、以下本題に入ります。
今回を以て、TMのオリジナルアルバムは「Quit30」を除いて、全部取り上げたことになります。
やっとここまで来ました。

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TM NETWORKの11thアルバム「SPEEDWAY」は、2007/12/5にリリースされた。
「TM NETWORK -REMASTER-」最終公演(12/3)直後の水曜日(オリコンウィークリーチャート集計開始日)のリリースである。
レコーディングの完了が「REMASTER」初日公演の日(11/2)の明け方だったというから、まさしく「REMASTER」を跨いでリリースされた商品だったことになる。
なおiTunesでは、11/28に先行配信されている。


本作は初動で12位・1.6万枚の成績を上げ、最終的には2.3万枚を売った。
2004年3月にリリースされた前作「Easy Listening」も順位は12位だったが、初動で2.4万枚、最終的には3.6万枚を売ったから、売上は約4年で2/3に落ちてしまったことになる。
本作は「Welcome Back 2」に続いて配信音源も販売されたが、これを加えても前作より売り上げが下がったことは間違いないだろう。


2.3万枚という成績は2020年現在で、音楽チャート上の記録では、再始動後の歴代オリジナルアルバムでもっとも低く、初期の「Rainbow Rainbow」「Childhood’s End」に次ぐものとなっている。
「Rainbow Rainbow」「Childhood’s End」も、チャートに出ないレベルの売上をカウントすれば、実際には「SPEEDWAY」を超えているだろう。
この時期がTM史上の谷底期であることは、その活動内容だけでなく、売上からも言えそうである。


ただしiTunes版はJ-POPチャートで1位を獲得したようで、小室は喜んでいた。
この時に先行配信を行なったのは、CDチャートは捨てて、ライバルが少なかった配信チャートに狙いを絞っていたのかもしれない。


本作のタイトル「SPEEDWAY」は、TMデビュー以前に3人が所属したバンドの名前である。
小室は自らのMySpaceで、10/5にこのタイトルを発表している。


小室は本作制作に先立つ打ち合わせで、次のTMのアルバムは「The Esther」「Base Area」に続くSPEEDWAYの3rdアルバムのイメージで考えていることをウツと木根に伝えていた。
アルバムタイトルは、この構想を反映したものだった。
小室がTMを再開させようと思ったきっかけが、iTunesで改めてSPEEDWAYの楽曲を聞いたことだったことは以前述べたが、その延長上に作成されたアルバムだった。


木根はSPEEDWAYをやろうと言われた時、「Base Area」で参照したTOTOのような音楽をやるのかと確認したら、小室から違うと言われた。
木根によれば小室の真意は、3人の原点に帰ろうということだったという。
小室自身は、TMデビュー以前に1回ワープしようというコンセプトだったと語っている。


「SPEEDWAY」の楽曲を聞いても、1979~80年のSPEEDWAYの作風に寄せている印象は特に受けない。
ただ1970年代の洋楽・邦楽を意識した楽曲が含まれており、そのことはSPEEDWAYの頃の意識で音楽に取り組んだことの反映だろう。
どんな流行を取り込むとか、どんな売り方をするとかは考えず、自分たちの原点たる70年代を見つめ直したのが本作だった。
その点では作風こそ違うが、前々作「Major Turn-Round」にも通じるところはある。


前章で触れた通り、この時は3人で話し合いながら一緒にレコーディングを行なったが、そのこと自体、小室にとっては当時の追体験だったのかもしれない。
1年前にiTunesでSPEEDWAYの曲を聞いた時、おそらく借金で精神的に追い詰められていた小室は、若い頃と同じようなやり方で音楽制作をしてみたくなっていたのだ。
ウツもこのアルバムが好きな作品だと言っている。

7-36.png締切過ぎてても仲良くレコーディング


「SPEEDWAY」のジャケットは、「Welcome Back 2」に続いてGAINAXの佐々木洋が手掛けた。
「Welcome Back 2」とは異なり、こちらは書き下ろしである。
ジャケットはTM3人の(極度に美化された)イラストである。
3人のイラストがジャケットに使われたのは、「CAROL」「EXPO」以来のことである。


3人の背景には円形の大きな時計があるが、TM=TIME MACHINEとすれば、これは彼らが操った時間を表示するものだろうか。
小室は「SPEEDWAY」について、タイムマシーンで時代を遡りSPEEDWAY時代にレコーディングをしてきたイメージだと言っている。


ジャケット裏には、時計の横を飛ぶ3体の魚型の物体が描かれている。
コロンビアの古代遺跡から出土した、黄金スペースシャトルと呼ばれる遺物をモデルにしているものだろうか(本記事秀さんコメント)。
これは飛行機や宇宙往還機を思わせるオーパーツとして取り上げられることも多いという。
おそらくこのジャケットでは、TMの3人がこれに乗って移動しているのだろうが、あの小室がよりによって魚をジャケットに使うことを認めるとは驚きである。
料亭を経営するKEIKOの実家に入り浸って、魚嫌いが改善されたということだろうか。


このCDで特徴的なのは、歌詞カードと一緒にアルバムを解説するライナーノートが封入されていることである。
これ以前も2004年のマキシシングル「NETWORK TM」に封入されたことがあるが、これに続くものである(本記事ジルラココさんご指摘)。
ただしその解説文は「NETWORK TM」に続いてまたも藤井徹貫であり、内容ははなはだ薄いものになっている。


「SPEEDWAY」の制作は、シングル制作と一連の作業で行なわれた。
3人揃って制作を開始したのは、木根のソロツアー「talk & live 番外編 vol.7」の地方公演が終わった8/27から少し後、8月末から9月初め頃だった。
ただし小室も木根もそれ以前から、各自デモテープ作りは始めていた。


シングル「Welcome Back 2」のトラックダウンは9/24に行なわれたので、これ以後他のアルバム曲にも本格的に着手したと思われる。
実はこの時点で、レコーディング期間は残り1ヶ月を切っていた。
10/21にはすでに締切を過ぎていたというから、本来10/20以前に仕上げていなければいけなかったらしい。


「楽器フェア」「TM NETWORK -REMASTER-」横浜公演)のリハーサルは10/27~31に行なわれており、当然これ以前にはアルバムを仕上げなければいけなかった。
だが結局これにも間に合わず、3人はレコーディングとリハーサルを並行して行なわざるをえなかった。


特に小室はほとんどリハーサルに来ることができなかった。
1日16時間のレコーディングを連日こなしていたという。
10/28には特任教授を務める尚美学園で公開授業があったが、この時は小室が学校に向かう途中で病院に運ばれ、中止になった。


小室は最終的には「楽器フェア」初日(11/2)の早朝までレコーディングを続け、エンジニアにトラックダウンを引き継いだ。
その後仮眠を取ってライブ直前のリハーサルに参加し、ライブを行なったことになり、これ以上ないほどギリギリのスケジュールだった。


そもそも10/20以前に仕上げる予定だったとすれば、8月末以後のレコーディング開始ではかなり期間が短い。
だが木根のソロツアーが確定していた以上、3人でまとまってレコーディングできる期間としては、この間しか確保できなかったのだろう。
あるいは小室と木根で担当曲数を折半したのも、本来はこうした日程の問題を勘案したものだったのかもしれない。


またウツによれば、レコーディングが何度か中断する事態があり、その間にテンションを保つのが大変だったという。
この時になんらかのトラブルがあったことが推測され、あるいは前章で触れたスタジオ確保の件もからむのかもしれない。


ただ木根の「震・電気じかけの予言者たち」には、9~10月にレコーディング中断があったことは記されておらず、そこに記される日付を見ても長期的な中断があったようには見えない。
だとすると中断は、8月末以前のことだった可能性が考えられる。
すなわちレコーディングは本来木根のソロツアーの合間を縫って始める予定だったが(途中から木根が合流)、何らかの事情で難しくなったのかもしれない。


そもそも小室もウツも6月以後はまとまった仕事がなく、スケジュールは空いていたはずである。
この間、小室は6月末日を以て吉本との契約を解除して、7月からイーミュージックと組むようになる。
TMのレコーディングも、この新体制発足とともに始まるはずだったのではないか。
だがスタジオ確保問題などの調整で時間が取られたため、レコーディング開始が大幅に遅れてしまった可能性を指摘しておきたい。


また小室の借金問題も絡んでいたのかもしれない。
2006年に5億円を詐取された被害者Sは、この頃から小室の関係者にも連絡を入れ、8月にはKCO実家の山田家にも借金取り立ての電話を入れるようになっていた。
小室はその対応に追われていたことも考えられる。
真相は闇の中だが、「SPEEDWAY」はかなり困難な環境の中で作成されたものと考えられる。


アルバムの内容に移ろう。
「SPEEDWAY」はTM作品では稀有なことに、木根曲が全体の約半分を占めている。
実に11曲中5曲が木根曲である。
しかも3曲は小室のインストなので、歌入りの楽曲では小室と木根の担当は3曲・5曲ということになる。
この割合は2~3曲を木根が担当する普段の作品とは反対である。
全体としてこのアルバムは、木根曲の印象が非常に強いものとなっている。


この分担は、小室が木根にお願いしたことだった。
小室も作曲能力が落ち込んでいたことを自覚していたのかもしれない。
ただSPEEDWAYの2ndアルバム「Base Area」も、小室が5曲(1曲インスト)、木根が4曲という比率だったから、これを踏襲しているともいえる。


むしろ本作の小室は、作詞に多く名を見せている。
歌入りの曲では木根作詞の「N43」を除く7曲を小室が担当しており、さらに実際の歌は入っていないが「You Can Find」では、後述するように、小室の過去の詞が歌詞カードに掲載された。
歌詞の多くは非常に深刻な内容で、当時の小室が極めて危険な精神状態の中で生きていたことが分かる。


一方でこれまで作詞で協力してきた小室みつ子は、本作では1曲も関与していない。
みつ子の詞がないアルバムは、これ以外では「EXPO」の例があるのみである。
しかも「EXPO」の時も、みつ子は「Wild Heaven」の作詞をしていたから(アルバム収録は見送られた)、「SPEEDWAY」はみつ子が一切関与しなかった唯一のアルバムということになる。


もう一つ、小室が目立っているのはコーラスである。
特に「Action」「Red Carpet」「Teenage」などでは、TMがウツと小室のツインボーカルではないかとも思わされてしまう作りである。
それなのに小室はライブでは、これらの曲でなぜかまったく歌わない。


このアルバムでは先行シングル「Welcome Back 2」を除き、スタジオミュージシャンが呼ばれなかった。
これは前章で想定した通り、制作費の問題が絡んでいる可能性がある。
楽器は小室・木根・ウツのみであり、エレキギターの奏者は木根のみである。
そのため楽器はどうしても小室のシンセを中心とするシンプルなサウンドにならざるを得ない。


ただシンプルなサウンドは、意図的なものかそうではないかはともかく、SPEEDWAYの3rdアルバムというコンセプトには合致しているともいえる。
これがそれまでのTMにはない「味」となっていると感じる者もいるだろう。
小室は、音がきっちりとしてない分、洋楽的に聞こえると言っている。


またこうしたシンプルな音作りが行なわれたことは、長らくメロディが死んでいた感のある小室が勘を取り戻すきっかけにもなったように思われる。
1曲目として作られた「Welcome Back 2」は、この点で及第点を出すのは難しいが、「Action」では気持ちの良い歌メロを作り上げることに成功している。
木根の楽曲制作に立ち会ったことで、丁寧にメロディを作ることの楽しさを思い出したのかもしれない。
小室も本作では、木根がとても良い仕事をしたとか、木根に支えてもらったとか言ってほめている。


なお本作のシンセはほとんどが手弾きだという。
それはリフを多用した前作「Easy Listening」とは大きく異なるところである。
あるいはこれもSPEEDWAY時代の作り方を意識したのかもしれない。


以下、本作収録の楽曲について触れたい。
ただしシングルとして先行カットされた「Welcome Back 2」「N43」は前章で触れたので、ここでは省く。


1曲目「Action」は、アルバムの中では終盤にできた曲だった。
鍵盤のみのシンプルなイントロが、このアルバム全体の導入にもなっている。


先行シングル「Welcome Back 2」があまり人気がないため、事実上この曲がアルバムの顔となっており、2020年の人気投票でも「SPEEDWAY」からは唯一この曲が100位内に入った。
2007/11/13にはTMのMySpaceと吉本のサイトで、この曲と「Teenage」の試聴音源が先行公開されている。


この曲は、イントロ・間奏やAメロは勢いがあるが、サビで落ち着くという独特な作りの曲である。
この曲に限らず、本アルバムの小室曲は「Welcome Back 2」「Red Carpet」も含め、テンポがAメロで早くサビでは落ちるという構成になっている。
サビのメロディをじっくり聞かせることを意識したのだろうか。


この曲ではAメロはウツが歌うが、サビのボーカルは小室である。
だがライブではサビもウツが歌い、しかもサビで盛り上げる作りになっているので、聞いた印象がまったく違う。
初めて聞いたのがライブだったこともあるが、私はこの曲はライブバージョンが圧倒的に好きである。


なお「SPEEDWAY」の曲は、先行シングル以外ほとんど2008年の「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」でしか演奏されなかったが、「Action」のみはアルバムリリースに先立って「TM NETWORK -REMASTER-」の渋谷CCレモンホール公演と武道館公演でも演奏されており、アルバムの顔とされたことが分かる。
また2012年の復活時にも「Incubation Period」で演奏されたが、これは2010年代のTMで「SPEEDWAY」の曲が演奏された唯一の例である。


歌詞はメッセージ性の強いもので、小室は後の「I am」につながるものだと言っている。
歌詞は日本語としては相当崩れており、歌詞としてはどうかと思うところもあるが、それだけ小室の生の言葉でもあるのだろう。
これを補足しつつ解読してみよう。
なお歌詞の主語が小室であることは前提とする。


この頃の小室は毎日何もかもが「はかなく むなしく さみしく つめたく」感じていた。
そのためただ夜明けまで「静かに生きたい」とだけ願っていた。
これは金策やノルマとしての仕事に追われる日々を指しているのだろう。


だがある夜に、「そんな後ろ向き」な考えを変えることがあった。
何かきっかけがあり、音楽活動に積極的に取り組みたいと思うようになったのだろう。


こうして改心した小室は、自分がこれまで「君(=ファン)を悩ませ」ていたことに気が付き、それまで自分を過信して開き直っていたことを反省して、「まず1歩走り始めた」、つまり音楽活動を再開したという。
この歌詞は先行シングルの「Welcome Back 2」と同じことを言っていると見て良い。


以上を踏まえてサビでは、「gonna let you know my action」「gimme chance one more my action」と歌い、また「君をつなぎ止める」「もう一度ふりかえすよ」「涙さえ枯れきった君への思いを形に」「やっと言葉の重みを分かって動くよ」と述べる。
例によって英語は変だが(日本語も変だが)、これは「僕のactionを知らせるよ」「もう1回actionするチャンスをくれ」とファンに伝えたものであり、「君をつなぎ止める」以下の日本語詞と同じことを言っている。


2004年の「Easy Listening」ではKEIKOのために再起を決意する歌詞が呈示されたが、「Action」ではファンの方を向いて、ファンのために頑張ることを述べたことになる。
この点でも「Welcome Back 2」と同趣旨である。


なお小室は2008年に逮捕された時、取り調べの調書で反省の弁を述べた上で、以下のように述べている。
これは「Action」の歌詞を踏まえたものと見られ、この曲に寄せた小室の思いを伺うこともできよう。

私は自分の楽曲の中で『チャンス』というフレーズを何度も使ってきましたが、その重みを理解しました。チャンスを与えてもらえないでしょうか。音楽を作らせてもらえないでしょうか。


小室曲として、4曲目「Red Carpet」も見てみよう。
小室はSPEEDWAY時代に遡ったアルバムのイメージが現れている曲として、これを挙げている。
3人ならではの曲で、古くもなく新しくもないと言っている。
普遍的な作りということだろう。


個人的にはこのアルバムでも好きな曲である。
鍵盤をピンと叩く音で始まるあたりも良いし、後ろでなっているシンセのフレーズも良い。
Aメロではウツと小室がラップ調の合唱をするが、これは珍しいと思う。
緊張感のあるAメロが、ゆったりとしたサビよりも印象に残る作りである。


ただ歌詞はなかなかつらいものがある。
1番で小室は、海外の栄光の場に立つことを夢見て活動する若いミュージシャンたちや俳優・コメディアンたちを眺め、その栄光の場を「赤く遥か遠い君のRed Carpet」と呼んでいる。


彼らは見事Red Carpetに立って、照れながらスピーチをする。
だがそれを眺めている小室は、すでにRed Carpetから「遥か遠い」無縁な存在になっているのだろう(だから自分のものではない「君の」Red Carpetと言われている)。
小室は自分が退いた後に若手が活躍をする様を、隠居のごとく傍目から眺めているのである。


その上で小室は2番で、Red Carpetの場を「近くて遠いあの神秘的なエントランス」「あのじゅうたん」「あのグレイスフルロード」と呼んで羨望の気持ちを示し、「それでももう一度」「仲間とジョークと共にあの場所にいたいと思えるかい?」と自問する。
ここでは小室はRed Carpetに呼ばれる立場から脱落してしまったことを痛いほど実感している。


以上を踏まえた上で展開されるサビの歌詞は「Take me to the airport」「Take me to “The Hollywood”」である。
小室はすでに栄光の座から脱落しているにもかかわらず、まだハリウッドで活躍したいという気持ちを捨てきれていない。


この歌詞は、落ちぶれた自分を嘆いているようにも見えるが、別の見方をすれば、ハリウッドに呼ばれるくらいの再起を志す心情を歌ったものにも見える。
私は先の「Action」の歌詞とセットで見れば、後者が正しいと思う。
小室はまだ諦めていないのであり、だからこそTMを再開させたのである。


木根の曲を見てみよう。
レコーディングはシングル曲の制作から始まったが、その時に木根は6/8拍子の曲を作るように小室からリクエストされた。
これがアルバム3曲目の「Pride in the Wind」である。


ところが木根は「Pride in the Wind」を作った後、もう1曲「N43」も作ってデモテープに入れた。
デモテープは「N43」が1曲目、「Pride in the Wind」が2曲目となったが、小室は1曲目を聞いてすぐに気に入って、2曲目を聞く前にこれをシングルに採用することを決めてしまった。
だが木根としては2曲目も捨てがたく、アルバムに入れることにしたという。
「Action」とともにスケジュール終盤(10月末)までレコーディングされていた曲である。


私としては、間奏の電子ピアノがとても好きな曲だ。
なお小室は作詞の時にサビのメロディを変えようとしたことがあったが、木根は元のメロディで行くように主張して、元のままにしたという。


小室の歌詞は、このアルバムの中でもっとも陰惨なものになっている。
ただ困ったことに、珍しく日本語としての破綻もなく、小室の歌詞としてはよくできていると感じる。


小室は1番Aメロの歌詞冒頭で、「こらえきれずに涙する」。
それは「どこかあなたに知って欲しい」からである。
一方でそのように願ってしまうことについて、「いつの間にか甘える術 身にしみついている自分が悔しい」とも思っている。
つらい状況にいる自分を慰めてほしい一方で、そんなことを願う自分が情けなくなっているのだ。


これに続くBメロには、「名も知れずそっと息をして 若者をうらやむ気さえ失せて」とある。
小室は世間から忘れられた中でひっそりと生き、活躍する若者に対して嫉妬心さえ湧かなくなっていた。
これは先の「Red Carpet」で語られていた心情でもある。
2004年に「Screen of Life」で人生というスクリーンに「クライマックスを作りましょう」と歌っていた心意気は、この頃にはすでに雲散霧消してしまっていた。


サビでは「誰もが想う真っ暗な希望なき明日」「誰もが願うまっすぐなあなたとの明日」と歌う。
この「誰もが」はなかなか理解しがたいが、文脈から見てAメロ・Bメロと同じく小室が想い願っていることだろう。
誰でも願うように小室も願っているのだ、ということだろうか。
この頃の小室は未来への希望を失っており、まっすぐな日々を「あなた」と過ごすことだけが願いとなっていた。
「まっすぐなあなたとの明日」の「まっすぐ」のニュアンスは微妙なところだが、借金返済や金策などとは無縁の音楽仲間やファンとともに過ごす日々を言っていると見るのは、うがちすぎだろうか。


以上を踏まえた上で曲名の「Pride in the Wind」(風にさらされたプライド)の意味を考えれば、ボロボロになった小室のプライドというところだろう。
2番サビの「Pride in the Wind 誇りさえもてない」という部分が、この曲名の意味をもっとも直接表現している。


さらに小室は未来に対してだけでなく、過去に対しても絶望していた。
それを示すのが、「誰もが願う風と共に消える過去」というフレーズである。
この場合の「過去」とは小室の栄光の証としての業績であり、小室はそれにすがりつこうとしていた。
しかし「風と共に消える」とある通り、実際にはその業績ですら、時間とともに世間で忘れられていった。
この頃の小室はすべてを失っており、そのためにプライドを保つこともできなくなっていたのである。


「Action」「Red Carpet」に見るように、この頃の小室は確かに再起を志していた。
だがその一方でボロボロに傷ついてもいた。
そのことを表現したのが「Pride in the Wind」の衝撃的な歌詞と考えられる。


冒頭の「こらえきれずに涙する どこかあなたに知って欲しい」のフレーズを見るに、この歌詞は曲を聞くファン(あなた)に向けてのメッセージなのだろう。
小室は情けないと自覚しながら、窮状をファンに知ってほしくてこの歌詞を書いたのだ。
こんな小室哲哉は、後にも先にもなかっただろう。


こうした絶望的な現状を歌った「Pride in the Wind」に対して、5曲目「Teenage」は、純粋に音楽を楽しんでいた10代の頃を回想した曲である。
木根もTM結成当時に西麻布JAKスタジオに通っていた頃(この頃は20代だが)を思い描きながら、当時のデモテープにあっても違和感がない曲として作った。


木根としてはメロディだけで作詞心をかきたてるような曲になるように心がけたという。
小室はこれを聞いて10代をテーマとした歌詞を付けたのだから、その点では大成功だったということだろう。


曲は落ち着いた気持ちにさせてくれるミディアムテンポの曲である。
イントロでは木根のハーモニカが入るが、これが郷愁を誘う。
木根と小室にとっての、安らぎの思い出としての10代(もしくは20代)のイメージを表現なのだろう。
この曲は小室が気に入っており、TM NETWORKのMySpaceではアルバムリリース前から「Action」と並んで試聴音源が公開されていた。


小室の歌詞は、「Music brings back to the teenage」というサビのフレーズで端的に表現されている通り、音楽によって10代の頃の気持ちを取り戻すというものである。
それは「SPEEDWAY」のテーマでもあるし、スタジオの小室の気持ちそのものでもあろう。
小室は音楽を聴きながら「今夜だけは酒で楽しみをつくろう」と述べてもいるが、小室の最後の救いとなったのが音楽であったことが分かる歌詞である。
おそらくiTunesでSPEEDWAYの楽曲を聞いた時の気持ちを歌詞として書き起こしたものではないかと思う。


特に注目したいのは2番Aメロで、「道端でいつまでも起きあがることもなく眠り続ける無気力な人」「1秒で誰よりもハートビートを鳴らすため若き頃の夢をなお思い出す人もいる」と、2つの類型の人を並べている。
これはともに小室自身のことであり、かつては前者だった小室が、音楽を聴いて(iTunesでSPEEDWAYの曲を聴いて)若い頃を思い出し、後者になろうとしていることを表明しているのだと思う。


2曲目「Diving」は、木根が小室からT.Rexの「20th Century Boy」のフォーク版を求められて作ったものである。
イントロは「20th Century Boy」そのもの(ほぼフォークアレンジのカバー)だった。
そのため仮タイトルは「K-Rex」とされていた。


デモテープはアコギ1本で作ったが、小室はこれを聞いて、このままで良いと言ってきた。
だが木根はまさかこのまま使われるとは思っていなかったので、CD用にギターを撮り直すことにした。
アコギ1本では音にふくらみがなかったということで、ウツにも参加してもらい、アコギ2本で一緒に演奏し収録した。
そのためこのアルバムでは、ウツもアコギ奏者としてクレジットされている。


小室は2人の演奏の上にメロトロンの音を重ねた。
このアイデアは、小室が10/30の歌入れの後で思い付いたものだった。
小室はスタッフに即日メロトロンを用意させ、早朝4時までレコーディングを続けた。
数時間後は「楽器フェア」リハーサルの最終日であり、さらにリハーサル後もレコーディングは続いたという。
このようにかなり無理をして入れたメロトロンだったが、たしかにこれが入ることで、曲は良くなったと思う。


TMでアコギを前面に出した曲は、「月の河」「Another Meeting」などはあるが、珍しい。
しかもアルバム2曲目という目立つ位置である。
これはTMを知っている者ほど意表を突かれるだろう。
小室は1曲目の「Action」から「Diving」への流れが好きだという。


歌詞には他曲のような重苦しさがなく、その点ではアルバム中で木根曲の「N43」「Teenage」と並ぶ清涼剤的な位置にある。
個人的には再結成後で一番好きな歌詞だ。


歌詞は抽象的で理解しがたいところもあるが、小室からファンに届けられる音を色でイメージしたものである。
なお歌詞には「Rainbow 7色をイメージして」とあるが、具体的に挙げられるのは「くやしさのグリーン、かなしみのブルー、さよならのブラウン、笑顔のオレンジ、2人だけのピンク」の5色だけである。
(その後の「sky blueじゃない、グレーでもない」も入れれば7色だが)


小室は音をリスナーに届けることを「Diving」と呼んでいる。
「worldダイビング」とも言っているので、届ける先には海外も含まれているのだろう。
おそらくネットを通じて音が世界中に配信される様子をイメージしているのだと思う。


その上で小室は「間違いなく着地したかな?」と聞いてくる。
自分が作った音がちゃんと届いたのか、ファンに問いかけているのである。
「ほほえんでる僕がみえるかい?」と言っている通り、小室はファンに曲を聴いてもらえることが嬉しいのだ。

モノクロからセピアだんだんと 色づく音色が宙に舞い
そこにとんでくよRainbow 七色をイメージして
ほほえんでる僕がみえるかい?
波うつこどう信じた僕は 間違いなく着地したかな?
涙ゆれてる はじめてクリアの光
自分だけの好きな宇宙へと とばす光 Can't you see?


6曲目「Welcome Back 2 -1983 Edit-」と8曲目「N43 -1983 Edit-」に挟まれる形で収録される「夏の終わり」は、本作唯一のバラードである。
シングル完成に目途がついた9/23に、木根が小室から吉田拓郎の「祭りのあと」風の曲をリクエストされて作ったものである。
歌詞は恋人たちの「夏色おわりを告げる夜」から始まるが、あるいは夏祭りをイメージしているのかもしれない。


小室の歌詞でこの曲だけは、小室もしくはTMからのメッセージもしくはモノローグではなく、とある恋人の関係を描いたものになっている。
2人の関係は夏の終わりに始まり、冬に終わりを告げた。
そして春には、それぞれ笑顔で別の道を歩いていく。
大学に進む高校生、もしくは就職する高校生・大学生をイメージしているのだろうか。
地味な曲なので影が薄く、あまり言及もされない曲だが、じっくりと聞くと良い曲である。


「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」では、「SPEEDWAY」の歌入りの曲はほぼ演奏されたが、この曲だけはセットリストから外され、以後もTMのライブで演奏されることはなかった。
ただ2020/2/6、ウツのソロツアー「Dragon The Carnival」追加公演(中野サンプラザ)で、1度だけ演奏されている。
なお把握はしていないが、もしかしたら木根ソロで演奏されたことはあるかもしれない。


以上6曲およびシングル2曲が本アルバムの歌入りの曲だが、他に9~11曲目には、小室のインスト曲が収録されている。
「Easy Listening」も最後の3曲はインストか準インスト曲が並んでいたが、それと同様の構成である。


9曲目「Electric Music」は、特徴のあるキーボードを次々と登場させるという構成を取った。
色々なシンセの音出しをしたことをきっかけに作った曲だった。
小室としては、以前Jean Michel Jarreと共演した経験も影響したという。


この曲では、TM再始動のきっかけが「楽器フェア」になることも意識したという。
一人楽器フェアとでもいうべきだろうか。
なおこの曲はライブSEも含めて、これまでライブで一度も使われたことがない。


11曲目「Malibu」は、かつて小室が住んでいたロスの地名から採られた曲名である。
小室がマリブの邸宅のことを思って曲にしたものという。
小室にとってこの邸宅は、プロデューサーとして栄華を極めた90年代後半の頃の象徴でもあるのだろう。
重々しいプログレ風味の曲で、小室はマニアックだがやりたいことをやったと言っている。


この曲はもともとコンサートのオープニングに流れる曲という構想だったが、実際に「TM NETWORK -REMASTER-」武道館公演では、オープニングSEで使われた。
「SPEEDWAY and TK Hits!!」では、ツアー後半からセットリストに加えられている。
さらに2010年代のTM30周年関連ライブでは、なぜかSEとして頻繁に用いられた。
小室も好きな曲なのかもしれない。


最後に取り上げるのが、10曲目の「You Can Find」である。
これは作詞・作曲小室哲哉となっており、実際に歌詞カードには歌詞も出ているが、歌は入っていない。
それはこの曲に関する少々特殊な事情がある。


レコーディングも終盤の10/24(本来の締切を過ぎていた頃)、小室は木根に阿部晴彦の話をした。
小室・木根と同世代の音楽仲間で、1979年にいち早くプロデビューを果たしたが、事故で早世してしまったことは、以前述べたことがある。


小室はこの時、かつて阿部に頼まれて作詞したことを言い出した。
小室は作詞の作業をする中で、自分の作詞の歴史の始まりとして、この件を思い出したのだろう。
小室が19歳か20歳の頃というから、1978~79年頃、ギズモに所属していた頃のことである。


そして小室は木根に相談した。
当時阿部に渡した歌詞に付けた曲のテープは残っていないだろうか?と。
当時の音楽仲間と一番つながっているのは木根だったから、関係者を通じて探してほしいというお願いだった。
木根は小室が阿部のために作詞していた事実自体、この時に知ったらしい。


小室のお願いはかなり無理筋に見える。
しかもレコーディングの最終締切だった11月1日まで、あと1週間しかない。
しかし木根は友人を介してテープの行方を捜した。
特に頼りになったのが、中学校時代に阿部とフォークデュオを組んでいた内田好美だった。
内田はSPEEDWAY前身のフリースペースのギタリストでもあった。
木根が内田にテープ捜索を依頼したところ、内田は友人を通じて親身に探してくれたという。


結果として問題のテープは見つからなかったが、阿部の姉の連絡先は確認できた。
木根は連絡を取り、遺品を借り受けることをお願いして承諾を受け、10/27に受け取りにいった。
この日は「楽器フェア」リハーサルの開始の日であり、レコーディングも進行中だった。
木根にとってはまことに多忙な一日だった。


その時受け取った遺品のテープや楽譜は、紙袋一つだけだった。
木根は将来を嘱望されたミュージシャンの残した音がこれだけなのかと、やりきれない思いになったという。
木根はこの遺品の中から、小室が書いた「You Can Find」の歌詞を探し当てた。
歌詞の内容は、夢を目指して動く若者たちを描いたものである。
これを見た小室は、今とまったく同じことを言っているとコメントしている。


木根がその遺品を小室に見せたのは、おそらく受け取った翌日の10/28だろう。
(受け取った後はスタジオに戻らず帰宅して中を確認したという)
小室はこの歌詞を見た時、19歳の自分から怒られた気がしたとも言っており、心に来るものがあったのだろう。
小室にとってこの件は、レコーディングという形での自分の過去探しの旅を締めくくる出来事でもあったのだろう。


小室は歌詞を見ると、おもむろにスタジオのグランドピアノに向かい、即興で演奏を始めた。
このインプロビゼーションの音源が「SPEEDWAY」の10曲目として収録された「You Can Find」である。
小室としては、阿部へのレクイエムという意識だったらしい。
歌詞に合わせたメロディが付けられたわけではないが、30年前の「You Can Find」の歌詞は、当時の小室直筆の写真の形でライナーに掲載された。


この曲は2020年までステージ上で演奏されたことはないが、上記のような制作事情もあり、「SPEEDWAY」収録曲の中では独特の存在感を持っている。
「REMASTER」「SPEEDWAY and TK Hits!!」では、ライブ終演後のBGMとして使われた。


特に「楽器フェア」に相当する「REMASTER」パシフィコ横浜公演(11/2・3)で流された時点では、「You Can Find」はまだスタジオでの収録から1週間も経っていなかった。
観客はこの曲が何なのか分からなかったが、多くの者は最後まで会場でこれを聞いた上で、拍手してから退場した。
この時に関しては、このBGMまでで一つのライブだったのだと思う。

SPEEDWAY - TM NETWORK
SPEEDWAY - TM NETWORK

7-35 Welcome Back 2

2/6にニコ生で、特番「Tetsuya Komuro Music Festival」が生配信されます。
2/24リリース予定の「Digitalian is eating breakfast Special Edition」「tk-trap RE:2021」の販促企画です。
随分と中途半端な時期に特番をやるんですね。


放送は18:00~22:00の4時間に及び、番組内では「TK SONG 40 ランキング発表」が行なわれます。
otonanoのサイトでは、2/3まで好きな曲の投票を受け付けており(1人3票)、この集計結果を発表するというものです。
MCはクラムボンのミトさんとふくりゅうさんが務め、木根さん・DJ KOOさん・住吉美紀さんがゲストとして出演します。


1/23にはこの番組のプレ特番として、「Tetsuya Komuro Music Festival「TK SONG ランキング中間発表」」が放送されました。
2時間の予定でしたが、MCのミトさんが盛り上がり過ぎて、3時間半に及ぶ放送となりました。
小室さんも途中で電話出演し、2/6には出演する旨を約束してくれました。


ランキング中間発表では、上位30曲が発表されました。
現時点で残っているファンの数も反映しているのでしょうが、TMがやたらと多く、全体の1/3を占めていました。
上位10曲中の半分はTM曲で、1位は「Get Wild」です。


ランクインした曲は、「Get Wild」「Human System」「I am」「Self Control」「Beyond The Time」「Nights of the Knife」「Electric Prophet」「Be Together」「Alive」「We love the EARTH」の10曲となります。
これに小室さんソロ曲の「Running To Horizon」「Gravity of Love」「永遠と名づけてデイドリーム」「I Want You Back」と、渡辺美里さんに提供した「My Revolution」「悲しいね」を加えると、TMN「終了」以前の楽曲および30周年のTM楽曲で半分以上を占めることになります。


逆に一般に認知度が高い90年代プロデューサー期の楽曲は、あまり上位に食い込みませんでした。
上位10曲に入ったのは、7位の「Departures」と9位の「Faces Places」だけです。
globeはこの2曲の他に「Feel Like Dance」「Freedom」もランクインしましたが、trf・安室奈美恵・H jungle with t・華原朋美・篠原涼子は、それぞれ1曲だけでした。


その他の曲としては、乃木坂46「Route246」、Pandora「Be The One」、AAA「ダイジナコト」が入りました。
個人的にAAAは少々意外でした。


それにしてもTM曲の順位が、去年の「Gift from FANKS」の人気投票と結構違うのは興味深いです。
去年の投票の上位10曲は、「Still Love Her」「Self Control」「Get Wild」「Beyond The Time」「Human System」「I am」「Electric Prophet」「Resistance」「Nights of the Knife」「Fool On The Planet」だったのですが、この時に1位だった「Still Love Her」が今回はTM曲の10位以内にも入らなかったことになります。


前回はTMだけで1人10票だったのが、今回は小室楽曲全体で3票という投票数の違いが影響したのかもしれません。
たとえば「Get Wild」「Human System」は必ず最初かその次くらいに選ぶ曲だけど、「Still Love Her」は上位3曲に入るほどではないけど10曲選べるなら入れる、という感じの人が多かったとか。
ゲーム理論的に分析しても面白いかもしれません。


なお本件とは関わりませんが、木根さんは2/9日本テレビ「FUN!FUN!FANTASTICS」に出演します。
80~90年代のライブパフォーマンスについて語るようです。


では本題に入ります。

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木根によれば、2007年のTM最初の打ち合わせは、GWに行なわれた。
ウツ・木根は「Spin Off from TM 2007」の本公演を終え、追加公演4本を残すのみになっていた頃であり、小室はDJ TKのレコーディングの終了目前の頃だった。


「楽器フェア」の話は当初M-tresに来たものだったが、その後の新譜制作やライブの企画は、すべて小室が考えたものだった。
GW以前に決定していたことは、11月の「楽器フェア2007」出演の件だけだったと思われるが、小室は打ち合わせでアルバムの制作方針にまで話を進めた。
アルバムの話が出た以上、当然その前提になるシングルの話も出ただろう。


そしてそれらを「楽器フェア」に合わせて11月前後にリリースすることも決まったと思われる。
「楽器フェア」の後の11月末から12月にかけては、ライブが3本開催されるが、その計画および会場の仮押さえも行なわれたかもしれない。
タイミングとしてはすでに動くべき時期である。


TMの活動に関する具体的なプランは、6月から考えることになった。
おそらく6/8の「Spin Off from TM 2007」終演を待ってからということだろう。
木根は6/10に「talk & live 番外編 vol.7」の仙台公演が控えていたから、6/11以降に次のミーティングが行なわれたものと考えられる。


6月の打ち合わせの内容はよく分からない。
その後しばらく、3人そろってのレコーディングはなかったようで、少なくとも記録の上では、楽曲制作の情報が多く現れるようになるのは、3ヶ月後の9月からである。
木根は8/27まで「talk & live 番外編 vol.7」で、かなりの過密スケジュールで全国を回っていたから、TMの本格始動はその後からということだったのだろう(その後は9/8・28の東京公演のみ)。


木根は8月末に、近日中TMのレコーディングをすると発言している。
小室はその時点ですでにTM新曲のサビを作っていたというので、8月中に小室が曲を作り、月末に木根が動けるようになってから3人で楽曲制作に入るという手順だったのだろう。


それまでの小室は、翌年リリース予定のKCOのソロ曲を作っていたという。
ウツについてはよく分からないが、10/18発売のX-BOX 360のゲームソフト「ビューティフル塊魂」のオープニングテーマ「Katamari Dancing」は、この頃にレコーディングしたものかもしれない。


9月前半にはTMがレコーディングに入っていたことが確認できる。
ただ木根によれば、当初はなかなか作曲が進まなかったらしい。
9月後半にはシングル制作も大詰めに入っていたようで、ドキュメンタリ映像「Kick Into Action」には、9/16のシングル曲のミーティングと9/24のレコーディングおよびトラックダウンの風景が収録されている。


その後はアルバム「SPEEDWAY」の完成に向けてレコーディングを続けたが、その最中の10/3には、TM NETWORK名義のMySpaceが開設された。
すでに小室は個人名義でMySpaceを活用していたが、TMの広報も年明けまではここを中心に行なうようになる(数ヶ月に過ぎなかったが)。
シングル曲「Welcome Back 2」「N43」の試聴音源も、リリース前にここで公開されていた。


この時のレコーディングには、特異な点があった。
大半の作業が小室自宅のTKCOM Studioで行なわれ、スタッフもほとんど入らなかったのである。
もちろんスタッフがまったく関与しなかったわけではないが、少なくとも楽器演奏や作詞・作曲・編曲は、ほとんど3人だけで行なった(例外はシングル曲「Welcome Back 2」のドラムのそうる透)。
作詞も小室みつ子には依頼せず、木根が担当した「N43」を除く全曲の作詞は小室哲哉が行なった。
2002~04年のように編曲の外注も行なわれなかった。


ウツは「なんか原点に戻った気がするんだ。3人で揃ってスタジオで何かをやるというようなことなんて長い間なかったから」と発言しており、小室も今までで一番楽しいレコーディングだったと言っている。
小室はレコーディングの時以外にも、ウツや木根に連日電話をかけて長電話していたといい、ウツは、こんなことはほとんど初めてだと言っている。
何年もの間殺伐とした世界に身を置き続けてきた小室としては、地獄のような現実から離れて友人と一緒に過ごせる時間は嬉しかったのかもしれない。


2004年の「Easy Listening」の時には、レコーディングで3人が集まることはなく、小室とウツ・木根は別のスタジオで作業を行なっていた。
2000年の「Major Turn-Round」の時も、小室は海外、ウツ・木根は日本にいて、別々に作業を行なっている(例外は、木根がアメリカのスタジオまで小室に会いにいった数日間くらい)。
これに対して2007年の楽曲は、3人が一緒になって作ったものだった。
3人の距離はそれまでと比べて、ぐっと近づいた印象を受ける。


以上のように、この時のレコーディングについては肯定的な側面から語られてきた。
木根は「震・電気じかけの預言者たち」に、この時の制作方針の3本柱として、SPEEDWAYの3rdアルバム・小室自宅でのレコーディング・3人での制作を挙げている。


だが実際には、レコーディングには問題もあったらしい。
ウツは2020/3/25のウェブラジオ特番「Gift from Fanks」で、「裏事情は大変だったから。レコーディングする場所がなくて、どうする?て感じだった」と発言している。
この発言を見る限り、3人での制作についてはともかく、小室自宅でのレコーディングというのは積極的な意味があるわけではなく、何らかの事情によって他のスタジオが使えなくなったことによりやむを得ず採った選択肢だったらしい。
木根も、本来レコーディングではウツが歌いやすい環境を整えるべきだが、ウツは小室自宅スタジオでの歌入れにも同意してくれた(つまりベストの環境ではなかった)ことを述べている。
これは美談で済ませるべき話ではなく、ウツが万全ではない環境を受け入れざるを得ない事情があったと考えるべきである。


TMはなぜ然るべきスタジオを使えなかったのだろうか。
仮に吉本やavexとの関係が悪くなってスタジオに出入り禁止になる事態があったとしても、すべてのスタジオが使えなくなるわけはない。
実際にアルバムの仕上げの段階では、ON AIR麻布スタジオと渋谷エピキュラスが用いられており、スタジオ側がTMを締めだしたとは考えがたい。
ならばTM側の事情で、あえて小室自宅のスタジオを使用したことになる。


制作上最適ではない選択肢を彼らが選んだとなれば、考えられる理由は予算の問題くらいである。
ただしウツも木根もソロやU_WAVEでは普通のスタジオでレコーディングを行なっており、それよりも売り上げが見込めるTMのレコーディングで制作費が出なかったのは、ますます不可解である。


あるいは小室の財政問題が制作費に関わっているのかもしれない(たとえば小室自宅スタジオを管理するTKCOMの問題など)。
スタジオにスタッフを極力入れず、スタジオミュージシャンをほとんど呼ばず、作詞・編曲の外注を行なわなかったのも、制作費削減が目的だったと考えれば単純に理解できる。
この点は詳しい事情が分からないのでこれ以上掘り下げないが、この時期のTM作品が万全の態勢下で制作されたわけではなかったことは確かと思う。


この時は最初に、リードシングルの楽曲がレコーディングされた。
以下、シングルの内容について見てみよう。
シングルのリリースは10/31で、「楽器フェア」開催直前の水曜日である。
オリコンのチャート集計日を勘案して、水曜日にリリースすることは規定路線だったのだろう。
シングルのリリースの告知は9月半ばで、11~12月の渋谷CCレモンホールおよび武道館のライブ開催の告知とセットで行なわれた。


シングルは5曲入りで、小室作詞・作曲の「Welcome Back 2」と木根作詞・作曲の「N43」および両曲の「TV Mix」、小室のインスト曲「Memories」が収録された。


本作はCDリリース以前の10/4に、TM NETWORKのMySpaceおよび吉本のサイトで「Welcome Back 2」「N43」の試聴音源が公開された。
また10/17にはiTunes先行配信が行なわれ、吉本のサイトでも着うたの配信が行なわれた。
先行配信という試みは、すでに2000年にROJAMで行なわれていたものだが、この頃にはMySpaceやiTunesなどのプラットフォームが普及したことにより、容易に行なうことができるようになっていた。
音源配信が一般化した時代のTM最初の作品が、「Welcome Back 2」だった。


CDの成績は16位・1.4万枚で、前シングル「NETWORK™」の13位・2.8万枚から半減した。
この結果は、iTunesでの先行配信の影響も考えるべきだろうが、CD購入者と配信音源購入者を合計しても「NETWORK™」の成績よりはかなり落ち込んだと見られる。


本作のジャケットは、神か悪魔の顔が刻まれている岩壁の近くに、巨大な機械の要塞がそびえ立っている様子を描いたもので、歴代シングルの中でも特に荘厳な雰囲気を漂わせている。
これはGAINAX(当時)の佐々木洋が手掛けたイラストである。

7-35.jpg
シングルのジャケットは、このイラストの上部をトリミングしたもの(翌年のライブDVDジャケットでは下部をトリミング)


佐々木はかつて1988年に、「CAROL」のジャケットを担当したという縁がある。
このイラストについて、TM NETWORKのMySpaceに掲載された佐々木自身の構想解説を以下に引用しておこう。

洪水の終わりを迎えた機械の箱船は、
降り立つ樹を見つけた鳩を追い、再び動き出しました。
乾き始めた陸地に火を灯すべく、
炉には新しい薪がくべられ、踏み出す脚は泥濘の浅瀬を騒がせますが、
その轟音の中でも鳩の羽音は途切れることはなく、彼の主の居場所を告げ続けるのです。
それを心頼りに、鳩を追うものはただ一心と地平に歩を進めます。


この絵自体はかなり以前に描かれお蔵入りしていたものを、小室が見て採用したもので、「CAROL」「Welcome Back 2」のために描かれたものではない。
小室がこれを見た経緯は不明だが、この頃小室は「CAROL」続編の構想を立てていたので、その関係で佐々木に接触したものだろう。


シングル収録曲について触れよう。
何と言っても衝撃なのは、1曲目「Welcome Back 2」である。
そのサビの歌詞を、以下に引用する。

Welcome 2 Back 2 Back 2 the future mind
Self Control Human System Love The Earth
U don’t forget U don’t lost
Love TrainのPassenger
まぎれもない君だったんだね
Get Wild and Tough
今やっと解った奴らは Time To Count Down


冒頭では「future mindにおかえり」とリスナーに伝えている。
future mindはTM NETWORKの音楽を表現したもので、そこに帰ってきたのは、3年ぶりにTMの新曲を聞いたファンであろう。


曲名の「Welcome Back 2」はこの部分から取ったもので、「未来志向のTMの世界におかえり」という意味と考えられる。
「2」は「to」のもじりであり(後の部分では「for」の意味で「4」も使われる)、第2弾という意味ではない。
小室はかっこいいと思って使ったのかもしれないが、個人的には曲名は「Welcome Back」で良かったのではないかと思う。


自分としては歌詞の始まりの「Welcome 2 Back 2」が語呂としてもかっこ悪く聞こえるのだが、むしろリリース当時話題になったのはその後、「Self Control Human System Love The Earth」という文字列である。
これらは言うまでもなくTMの楽曲名であり、「克己・人間関係・地球を愛する心というTMの示してきたメッセージを、君はまだ忘れていない(はずだ)」とでも言いたいのだろう。


その後の歌詞には「Love Train」「Passenger」「Get Wild」「Time To Count Down」の曲名が取り込まれる。
なお「Self Control~U don’t lost」の歌詞のフレーズは曲の冒頭と2番サビで使われるもので、1番サビでは「Wild Heaven Just One Victory All-Right All-Night No Tears No Blood」となっている。
これは言うまでもなく、「Wild Heaven」「Just One Victory」「All-Right All-Night (No Tears No Blood)」の曲名を並べたものである。


「Welcome Back 2」のPVにはこの曲の推敲中の歌詞が映っている。
そこには「レッツダンス(Come on Let’s Dance)」「アクシデント」「Kiss You」「Time 2 Count Down」が候補として挙げられ、「今やっと解ったやつらはTime To Count Down」の部分は「~ほど■えていたのに」となっていたことが確認できる(■は見えず)。
TMの曲名を並べて歌詞にするという構想がまずあり、そこに入れる曲名を考えるという作業工程が分かる。


2004年の「Screen of Life」の「ですます」調の歌詞も、当時ファンの間で話題にされたが、この時はそれ以上にザワついた。
私自身、非常に動揺したことは、当時のブログに書いているし、今でも奇異な歌詞という評価は変わっていない。
小室としてはファンの意表を突こうとしたのだろうか。


歌詞の出来についてはここでは措くとして、以下では小室がこの歌詞で書きたかったことを確認してみたい。
この曲の歌詞はインパクト絶大なサビのために、歌詞本体がほとんど読まれていないと感じるからである。
曲は冒頭のサビの後、Aメロ・Bメロ・サビと展開する。
A・Bメロの歌詞は、TM(小室)のモノローグの形式である。
そこで語られるテーマを一言でいえば、TM再開に当たり戻ってきたファンとの再会と過去のTMの思い出である。


それをもっとも端的に示すのが1番Bメロの「1991 Thanks 4 My Memories 思い出話に花が咲く」の歌詞で、ここでは過去の思い出について感謝が述べられている。
その後に曲名が並べられるのも、TMの思い出として列挙されたものであり、ファンがその思い出をまだ忘れていないこと(「U don't forget U don't lost」)を、小室は喜んでいるのだと考えられる。


ところで1番Bメロ冒頭の「1991」という数字は、何の説明もなく突然登場するが、これが1991年を示していることは推測できよう。
この年には「Love Train」「EXPO」がリリースされたが、これをあえて取り上げる理由は不可解である。


もう一つの不可解な数字として、2番Aメロ冒頭の「やっと繋がったのはそれから4年後のこと」というものがある。
指示語である「それ」が冒頭に現れるという謎の文章のため、「それ」が何なのか分からず、理解しがたい文章である。
これを1番に登場した「1991」を指すものと見て、そのまま1991年の出来事とし、2番はその4年後の1995年を歌っていると考え、1995年デビューのglobeもしくはKEIKOの思い出を語っていると考える者もいるようだが、TMファンとの再会をテーマとした歌詞の解釈としてはありえない。


そこでもう少し歌詞を見ると、「それから4年後のこと」は直後で「ロンドンの街中が赤く染まった日のこと」と言い換えられている。
そしてそれは「やっと繋がった」時だった。
TMとロンドンの関係を考えれば、「ロンドンの街中が赤く染まった日」とは、小室がロンドンに移住して「CAROL」を制作した1988年以外にありえない。
これが「それから4年後のこと」なのだから、「それ」は1984年であり、TMがデビューした年となる。
つまりTMはデビューから4年後に、ロンドンで「CAROL」を制作し、そのことによって「やっと繋がった」のである。


「やっと繋がった」というフレーズは舌っ足らずであるが、おそらく「CAROL」によってファンがTMを知ったことを意味している。
つまり「CAROL」がTM史上で最大の売上となって、もっとも多くの人に知られたことを言っているのだろう。
TMはデビュー当時は誰にも知られていなかったが、「CAROL」のヒットによって広く知られるようになったというのが、この歌詞で語られるストーリーと考えられる。
もちろん実際にはTMは「CAROL」で一挙に知られたわけではないが、ここでは「CAROL」は、過去のTMの栄光の象徴として取り上げられているのだろう。


ここまで見れば、先ほど見た1番サビの「1991」の意味も見当が付く。
これは1991年のTMではなく、1991年の物語として構想され「A Day in a girl’s Life 1991」の副題を附した「CAROL」そのものを表しているのだろう。
この歌詞では、過去のTMの活動が「CAROL」という作品に集約されて語られているのである。


ところが小室は、先に進もうと焦り過ぎていたと反省もしていた。
そのことが、2番Bメロの「まだ何もかもが僕は早すぎて焦り過ぎていたのかもしれない」という歌詞で示される。
そこで小室は、「せめて赤い糸のようなもの(があればよいのに)」と言って、ファンとのつながりに救いを求める。


この歌詞で小室は、かつての栄光を振り返った上で、新しいことを始めようとして、ファンの想いをないがしろにしたことを後悔している。
Bメロ最後は「でも未来を示唆していたのかも」の一言で締められているが、これは現在の苦しい状態が、焦り過ぎた活動の必然的な結末だと言っているのだろう。
要するに小室は、過去を振り返った上で、今の状態を自業自得と自虐的に語りながらも、TMのファンに最後の救いを求めているのである。
これが当時の小室の心情を直接反映したものとすれば、小室がTMを再開させたのは、まさに絶望的な状況下で救いを求めてのことだったということになろう。


以上が「Welcome Back 2」の歌詞についてだが、曲についても触れよう。
シンセの重い音色やそうる透のドラムのため、曲は前シングル「Screen of Life」と比べるとロック的な雰囲気が強く感じられるが、小室はシンセが主メロのEDM的な作りであると言っている。
たしかにシンセの存在感は結構強い。
特にサビの部分のシンセの音色はかっこいいと思う。


ただ私は初めてこの曲を通して聞いた時、Aメロの展開が単調でつまらない曲だなあと感じた。
サビとその後の「Get Down」の部分のオケはそこそこかっこいいと思うのだが、あとの部分はいかにも取ってつけた感じが否めない。
サビは歌詞が微妙な一方で、Aメロは曲が微妙なので、どこも満点をつけがたい曲である。


実はこの曲は、テレビ番組のタイアップ曲のプレゼン用に、8月頃サビの部分だけを作っていたという(番組名は不明だがテレビのスポーツ番組だったらしい)。
おそらくサビだけ作ってから、Aメロ・Bメロを継ぎ足したのだろう。
Aメロのやっつけ感も、そこから来ているのかもしれない。


なお「Welcome Back 2」はこのプレゼンには落ちたが、11月からよみうりテレビの「今夜はシャンパリーノ」のエンディングテーマに採用された。
ただし例によってほとんど目立たない形で使われたので、タイアップ効果は皆無だったと思われる。


シングルにカップリングとして収録される「Welcome Back 2 (TV Mix)」では、サビで小室の歌をかなり濃厚に聴くことができる。
小室の歌のファンには、お勧めのテイクである。


また本作はアルバム「SPEEDWAY」には、「1983 Edit」のバージョン名で収録されている。
シングル版がフェードアウトで終わるのに対し、「1983 Edit」はカットアウトで終わるという違いがあるが、アレンジが異なるわけではない。
なおカップリング曲「N43」も、アルバムには「1983 Edit」として収録されるが、シングル版との関係は「Welcome Back 2」と同様である。


先に言及したように、「Welcome Back 2」にはPVがあり、一時TM NETWORKのMySpaceで公開されていた。
これはレコーディング風景を編集したもので、曲も全体には及ばず、1番のみ2分程度のものである。
現在ではDVD「TM NETWORK -REMASTER-」通常盤のボーナストラックで見ることができる。


シングルカップリング曲に話題を移そう。
「N43」は木根が作詞・作曲したTM史上唯一の曲である。
木根が作曲した曲は以前からたくさんあったが、作詞はこれまで「Another Meeting」(作曲宇都宮隆)のみだった。
木根はこの頃ソロで自ら作詞・作曲を行なうようになっていたので、その成果を反映したものとも言える。


木根は小室から言われて、レコーディング以前から1人でデモテープ制作を行ない、小室に送っていた。
最初に送ったのは「N43」「Pride in the Wind」が入ったテープだったが、小室はこの中で「N43」を気に入り、シングルに採用することに決定した。
小室は後にもこれを名曲と言っている。


当初木根は作曲のみ行なうはずだったが、この曲を気に入った小室は、木根に作詞を勧めた。
「SPEEDWAY」収録曲中で、小室が作詞していない唯一の曲である。


歌詞のテーマは札幌である。
デビュー当初、プロモーションのために頻繁に札幌に通っていた頃のことを歌詞にしたものだった。
曲名の「N43」は、その頃通っていた札幌のラウンジの名前である(2021年現在もある)。


歌詞の内容は、N43での女性との思い出にまつわる実話を元にしているとのことである。
TMが札幌に頻繁に通ったのは1984年後半から1985年前半だから、その頃のことだろう。


「あの頃のこの僕は今頃のあの君と愛を語ることでW(Double)にはなれずに」という歌詞を見る限り、僕(木根)と相手の女性は結局一緒にはなれなかったらしい。
1番サビ「君が描いていた未来は」「初雪のように白いまま」の歌詞は、当時考えていた未来が実現されなかったことを意味している。
2番サビで過去の思い出を「引き裂かれた星座の中」と歌っているのも、2人が別れたことを示唆するものだろう。
娘の沙織(shao)が1987年生まれなので、木根の結婚は1985~86年頃と考えられ、「N43」の歌詞はそれを少し遡る頃のロマンチックな思い出を振り返ったものと考えられる。


当初この曲は、仮題を「White Room」と言った。
歌詞は小室との打ち合わせを経て何度か変更され、その最終段階に近い9/16に、曲名が「N43」と改められた。
「White Room」はN43の建物の白い外装を表現したものだろうが、白い雪が降り注ぐ日の出来事であることも示しているのだろう。


なおこの曲名は、木根は「エヌフォーティスリー」と読んでいた。
曲の中でもウツは「エヌフォーティースリー」と歌っている。
だが「楽器フェア」開催11日前の2007/10/22に放送された「DIGA Wonderful Street World」にTMがゲスト出演した時、木根がこの読みで曲紹介をしたところ、小室から意見がついて「エヌヨンジュウサン」と改められた。
別にどちらでも良い気がするが、札幌の店名は一応「エヌヨンジュウサン」らしい。


クレジットにはないが、この曲の歌詞には一部小室の手が加わっている。
小室が打ち合わせの過程で、クリスマスソングにすることを提案し、サビに手を加えたというのだ。
逆に言えば「N43」は、当初クリスマスの歌詞ではなかった。
TM3人は1984/12/24には東京にいたことが確認できるので、実際にも木根と女性がクリスマスにN43で会ったことはないと考えられる。
だが「N43」は小室の提案で、「Twinkle Night」「Leprechaun Christmas」「Dreams of Christmas」に続くTMのクリスマスソング第4弾となった。


歌詞の変更を細かく見ると、9/16時点では1番サビ冒頭が「いつも変わらないWhite Room 引き裂かれた星座の中」だったが、商品版では「何も変わらないsilent night 君が描き始めていた未来は」となっている。
「White Room」のタイトルが変更されたことに伴い、クリスマスをイメージさせる「silent night」の文言が入れられたのだろう。
2番サビ冒頭の「どこの街よりホワイトクリスマス 引き裂かれた星座の中」も、同様の修正が加えられた結果である可能性が高い。


この曲は全般的に、温かみのある電子ピアノの音色が印象に残る。
これは木根が弾いたものを小室が手直ししたものである。
ライブでもこの電子ピアノは木根が担当している。


「Major Turn-Round」「Easy Listening」では、木根はもっぱらバラードを担当しており、木根の非バラード曲は1999年の「80’s」以来となる。
軽快なオケと気持ちの良いメロディで、個人的に木根の魅力が出ている良曲と思う。
木根の非バラード曲の中では、「パノラマジック」と並んで私がもっとも好きな曲だ。


カップリング2曲目のインスト曲「Meories」は、作曲が「モデスト・ムソルグスキー/小室哲哉」となっている。
これは楽曲全体が「Pictures At An Exhibition(展覧会の絵)」のフレーズを元にしているからである。


ただここではムソルグスキーの名が挙げられているものの、小室にとってはむしろ、この曲をプログレッシブロックアレンジでライブ演奏したEmerson, Lake & Palmer(ELP)が意識されていたに違いない。
ELPのライブアルバム「Pictures At An Exhibition」(1971年リリース)は、小室が子供の頃にエレクトーンの先生から聞かせてもらったもので、初めて触れたロック作品でもあった。
それは小室にとって、過去のTMの思い出を振り返る「Welcome Back 2」や、TMデビュー当時を歌った「N43」以上の「原点」だった。
これが「Memories」と題されたのは、「Pictures At An Exhibition」が小室の音楽の原体験であるからにほかならない。


曲はシンセのみで制作されており、アレンジもトランス的な雰囲気を残している。
ELPによるプログレアレンジとは別のアプローチで、自分なりの「Pictures At An Exhibition」を作ってみたのだろう。
面白い試みだと思う。


なお「Memories」はアルバム「SPEEDWAY」に収録されなかった。
以後のオリジナルアルバムやベストアルバムにも収録されておらず、現在ではシングル「Welcome Back 2」のカップリング以外で聞くことはできない。
TM歴代の楽曲中でももっとも影の薄い曲の一つであろう。


以上3曲の内、「N43」は木根のソロライブで演奏されたことはあるが、TMでは2007年の「TM NETWORK -REMASTER-」の横浜公演(楽器フェア)と武道館公演の合計3回演奏されたのみである。
「Memories」に至っては、ごく一部が「TM NETWORK -REMASTER-」の横浜初日公演(2007/11/2)で一度演奏されたに過ぎない。


これに対して「Welcome Back 2」はシングル表題曲として、この時期の代表曲の位置を占めており、「TM NETWORK -REMASTER-」およびこれに続く「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!」で演奏された。
またウツは意外と気に入っているのか、「Tour timesmile」「Dragon The Carnival」など,ソロツアーでこの曲を演奏している。
実際にライブで聞くと、CDの時ほど歌詞に耳がいかないこともあり、それなりに盛り上がれる曲である。

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