2-17 Self Control (Single)

「Self Control(方舟に曳かれて)」は、1987/2/1にリリースされた
当時十代の音楽に関心のある層に、
TM NETWORKの名を決定的に広めた曲である


売り上げ枚数の面ではまだ大したことはないが、
後々までの知名度などを考えても、
この曲を以ってTMのブレイク、
あるいはブレイクが決定付けられたと言って良いと思う
現在に至るまで、TMの代表曲の一つである


ジャケットはウツを中心に、
左に木根、右に小室が立ち、
それぞれが別々の方向を向いている
正面を見据えているのがウツで、
小室もなかなかいい表情で映っている


悲惨なのは木根だ
サングラスをはずしている稀有な写真だが、
後ろを向いて顔が見えない
ある意味で、ジャケット表から抹消された「1974」よりもひどい扱いである





写真はモノクロで、そこに飾り気のない字体で、
単色の黄色で「Self Control」、
紫で「TM NETWORK」と書かれている
装飾性が薄いデザインで、
「Come on Let's Dance」「Gorilla」などが凝ったロゴを付け、
合成写真も使って派手な雰囲気を出していたことと比べると、
方針がかなり変わっていることに気付く


この雰囲気は「Self Control」「Get Wild」まで引き継がれる
自分としては、当時のSF的な雰囲気ともマッチしていて、
かなり好きなジャケットである


レコーディングでは、ギターにパール兄弟の窪田晴男、ドラムに山木秀夫が参加した
小室はこれ以前、別の曲(非TM名義の曲だろう)のレコーディングで窪田と仕事したことがあり、
その時にかっこよかったという印象が残っていたことから、依頼したものらしい


この曲の特徴は、音の薄さである
「Come on Let's Dance」と比べると、
生音の少なさ(シンセの目立ち方)に気が付く
曲は徹底的に単純化されている
Bメロで一瞬曲調が変化するものの、
イントロ、Aメロ、サビのオケは、
メロディは異なってもすべて同じリフを用いており、
それがサビのフレーズを頭に残す役割を果たしている
メロディよりもシンセリフがメインになっていると言える


このリフはサビのフレーズ以上に印象的である
小室は意識的にメロディではなくリフでヒット曲を作ろうとしたのだという
シンセの決まったフレーズで何の曲か分かる曲を高校生の頃から作りたかったが、
それがこの時にできたということである


実はこの曲は、当初はもっと複雑な作りだった
この曲のデモ音源は、
「Gorilla」期の雰囲気が非常に強い
一番近いのは「Harlie Good-Bye」だろうか


強調されているギターの音を除いても、
最終的な商品版よりもはるかに音が多く、
様々な要素が入っている
「Self Conrtrol」商品版は、その中から一部分だけを取り出して、
そこだけで曲にしたという印象である


小室はとにかく意識的に音数を減らし、
最後まで音を加えたい欲求にかられながらも我慢したという
これは「Gorilla」の時にも心がけたというが、
それを遥かにしのぐ単純さである


小室の場合、自然に曲を作ると、
むしろ複雑な構成になる傾向があると、
小室自身がそう語っている
それも小室の持ち味で、個人的にはそうした曲も好きなのだが、
小室はたまに意識的に単純化した曲を作ることがある


そしてそのような時に、小室は後々まで覚えられる名曲や、
自らの運命を変えるようなヒット曲を生み出すことが多い
「Seven Days War」「EZ Do Dance」などが、
その例として挙げられるだろう
実際に小室は、この曲が受けたことが自信になり、
その後の曲作りへの大きな転機になったという


実は当初「Self Control」は、
シングルとして作ったものではなかった
しかしこの曲を聞いた雑誌の記者が、
シングルに良いのではないかと発言したことがきっかけとなり、
シングルに選ばれることになったという
当初は「Don't Let Me Cry」をシングルにする案もあり、
特にウツは「Don't Let Me Cry」推しだった


ライブでのこの曲の一つの見所は、
サビの「Self Control」のコーラスである
これは木根の声をサンプリングしたものであり、
ライブでも木根の担当箇所である
ここはBugglesの「Video Kills The Radio Star」のコーラスからヒントを得たらしい
自らの内側で叫んでいる雰囲気を表現したのだという


「Self Control」のコーラス→ワンフレーズのウツ歌詞
という流れを繰り返す単純でスピード感のあるサビは、
大変覚えやすい
この頃の曲では、「Maria Club」「Get Wild」も同様の構成である
この覚えやすさは、すでに触れたように、
イントロ~Aメロのオケで同じフレーズが使われていることからも、
さらに増している


「Self Control」のサンプリングボイスは、
結構なインパクトがあり、かつ耳に残る
これと、単純な音、若者向けの歌詞がうまく結びつき、
初めてTMを聞く者に印象を作りやすい曲となっている
現在までTMの代表曲とされるゆえんである


この曲の魅力は、音だけではない
TMの代表曲として好まれている理由のかなりの部分は、その歌詞であると思う
作詞は前作「All- Right All-Night」と同様に小室みつ子である
今聞くと、いかにも80年代の10代向けの歌という内容で、
恥ずかしさも残るのであるが、
当時の彼らのスタンスやファン層、あるいは時代を考えれば、
最高の歌詞であると思う

君を連れ去る車を見送って
追いかけることさえできなかったあの夜
全てを許す消えそうな横顔
窓ごしに映ってせつなく手を振ってる
言いたいこともうまく言えなかった
このままサヨナラをする訳にはいかない
心の中にたかまってくリズム
もう押さえることはできないさ

しばられたアダムとイブ 走り抜けたボニー&クライド
大切なあの子の目を   これ以上くもらせないで

Self Control今までのぼくは  Self Control本当の悲しみ
Self Control知らずにいたのさ Self Control君に会うまでは
Self Control自由のナイフで  Self Controlとらわれた心を
Self Control粉々にするさ   Self Controlバラバラにするさ


当時小室哲哉も言っているが、
この曲によく歌詞を乗せたものだと思う
若者に対して自らの解放を促す歌詞のスタイルは、
「Goriila」期の延長上にあるが、
好きな子が連れ去られるのを見過ごした自分に後悔し、
新たな決意を胸に燃やす若者というストーリーを持ち込んだところに、
「Self Control」の独自性がある


これ以前では、「1974」「Confession」「雨に誓って」なども、
ストーリー性を持ち合わせていたが、
これらは基本的にラブソングであった
ストーリー性を持ったラブソングというのは珍しいものではない
だが「Self Control」の場合、
「Gorilla」期と同様にメッセージソングの性格が強く、
ストーリー性をもったメッセージソングと言える
以後の「Get Wild」「Resistance」なども、
ラブソングの要素を若干強めながらも、
基本的に「Self Control」的な手法の延長上にある


TM的・小室みつ子的と言われる特徴としては、
神話や欧米のカタカナ人名がよく登場するという点もある
(「アダムとイブ」「ボニー&クライド」など)
「Be Together」の「カサノバ」や、
「Ignition, Sequence, Start」の「テレス」「ディアス」なども同様の例である
これは十代が受け入れやすい雰囲気を作るのに、
一定の役割を果たしている


「Self Control」というタイトルにも関わらず、
本作の歌詞はむしろ自らを解放するという内容になっている
PVでも、管理された子供たちが解放されるストーリーである
当初小室哲哉は「Self Control」というタイトルについて、
目標に向かって我慢するというニュアンスを考えていたが、
小室みつ子の解釈でこのようになったという
なお小室哲哉がこの曲名を考え付いたきっかけは、
ラジオで受験に悩む受験生から葉書をもらったことであるという


シングルのカップリングには、「All-Right All-Night」同様、
Instrumentalが収録された
この曲は一時期、
「小室哲哉のSFロックステーション」オープニングで使われていた


ただし単純なカラオケではなく、
アウトロが歌入りの方と少し違っている
歌入りの方は最後フェードアウトで終わるのだが、
Instrumentalはキーボードの音だけが残りカットアウトする
後に「Self Control」「Gift for Fanks」に収録されるバージョンでは、
Instrumentalのオケに歌が乗った形になっている


このシングルは33位を記録した
「Come on Let’s Dance」の35位をしのぐランクである
しかもこのシングルは、
3週間後にアルバム「Self Control」が発売したにもかかわらず、
10週近く100位以内にランクインし続け、
3万枚の売上を記録した
実に「Come on Let’s Dance」の3倍近い成果である


枚数の面では、世間的には大した売り上げではないが、
息の長い売れ行きは、やがて来るべきヒットの前段階である
実際に「Self Control」と入れ替わりでランクインする「Get Wild」は、
音楽好きの層に留まらず、一般人の耳にも止まるヒット作となるのである


「Self Control」は、
1992年に「Tour TMN EXPO」のセットリストが変更になって以後、
TMライブの定番曲となっており、
現在では「Get Wild」「Be Together」と並んで、
TMライブで盛り上がる曲の代表として扱われている


ただし自分の印象としては、
この曲がそのような地位を占めるのは再結成後というイメージである
「Self Control」リリース後のツアー「Fanks! Bang The Gong」や、
その後開催されたスペシャルライブ「Fanks Cry-Max」では、
当然この曲は演奏されているが、
その後1991年までに完全な形で演奏されたツアーは、
「Kiss Japan Dancing Dyna-Mix」のみである
(ただし「STARCAMP TOKYO」「TMN Wild Heaven」など単発ライブでの演奏例はある)
「Kiss Japan Tour」「CAROL Tour」でも演奏されているが、
どちらも曲の途中までの演奏だった
この頃の曲では、「Don't Let Me Cry」の方が、
むしろ目立つ形で演奏されていた

(2007/4/25執筆 2008/10/22・2010/9/22加筆)

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この記事へのコメント

haru
2012年06月25日 19:32
 「All-Right All-Night」で衝撃を受けた後次に私が聴いたのが「Self Control」でした。(ただ、まだ3人のビジュアルは目にしてなかったと思います。)

 「Self Control」を聴いて必ず思い出すのは、私が中学1年生の時(87年)の体育祭なんです。
 毎年恒例の種目として全学年の男子(田舎なので100人程度しかいませんが)は組体操を披露し、一方で女子は3曲の創作ダンスを披露していました。そこで「Self Control」に合わせて創作ダンスを披露していたわけです。
 でも具体的にどんなダンスだったかは全く覚えていません。(夏の終わりだったし、凝視するわけには…。)

 「この曲名を考え付いたきっかけは、ラジオで受験に悩む受験生から葉書をもらったこと」というエピソードは私も聴いたことがありますが、私の場合歌詞が胸に来るようになったのは、社会人になってからでした。学生時代に勉強していただけでは、社会では通用しないという現実を痛感した時に「Self Control」を改めて聴いて、歌詞に深く共感したことがありました。

 ところでこの曲のイントロで出てくる「チャ・チャ・チャーラ、チャラ・チャチャチャチャラ・チャラ・チャーラ」のフレーズは小室節の定番となりますが、翌88年小泉今日子さんに提供した「Good Morning-Call」にもイントロで使われています。これはアレンジャーが小室作だから、ということであえて使ったそうですが。
青い惑星の愚か者
2012年06月28日 02:45
Self Controlでダンスがあったんですか
リズムが安定しているから、たしかに踊りやすいかもしれませんよね

Good Morning-Callの話は私もどこかの記事で書きました
リアルタイムでこの曲を聞いていたし、その頃TMも好きだったんですが、作曲が小室さんだったことはHit Factoryで初めて知りました
あのイントロはアイドルの曲に使っても可愛くて良いですねえ
まさと
2013年03月09日 02:19
この曲のデモ、僕も持ってますが、全く近いますよね。GET WILD'89がそれまでのTM史上長いイントロ曲ですがSelf Controlのデモもかなりの長さですよね。もしも、デモとそんなに変わらずに作られていたとしたら、アルバムの印象もかなり変わったでしょうね。
青い惑星の愚か者
2013年03月10日 16:52
Self Controlのデモは、本当に試作段階だったんでしょうね
とにかく色々詰め込んでみて、その中からここだけ使って…という感じで作ったんだと思います
つうか、あれは事前に曲名聞いていないと、何の曲か気付きません(笑

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