4-9 Rhythm Red Beat Black

「Rhythm Red Beat Black」は1990/12/21発売で、
「Rhythm Red」からのシングルカットとなる
TMN名義であることが明記された最初のシングルである
「Time To Count Down」は「TM NETWORK」と書いてある)
ジャケットは3人の並んだシンプルな写真だが、
ルックス的に最盛期の彼らの容貌を見ることができる


チャートでは3位、1週で9万枚、総合20万枚を売った
シングルカットでセールス的には不利だったが、、
カップリングに新曲「Dreams of Christmas」が入っていたこともあり、
かつての「Get Wild」「Beyond The Time」などと変わらない数字を出した
「Get Wild」の出た4年前なら年間30位の数字だが、
1991年度(1990/12~1991/11)のCDバブルの結果、年間81位にとどまった


なお売り方の問題なのだが、
クリスマスソングをイブ3日前にリリースするというのはどうなのだろうか
クリスマス需要は12/24を過ぎるとほぼなくなるので、
もっと早い時点でリリースしないと意味が無いと思う
実際に二週目には10位に落ちている


このシングルには購入者特典があった
同時発売のビデオシングル「TMN」についている応募券と一緒に、
このシングルについている応募券を送ると、
抽選でファンイベントに招待すると言うものである


このイベントは「Rhythm Red Tour」終了直後、
1991/3/21、一日2回、新宿Space Zeroで行なわれた
ウツと葛城哲哉が来て、トークやプレゼントなどがあった
オープニングでは「Rhythm Red Tour」「69/99」の映像が上映されたが、
曲の演奏はなかった
ずいぶんと微妙なイベントである


さて「Rhythm Red Beat Black」だが、
私は大変好きな曲である
TMN期のフェイバリットソング二曲を挙げれば、
これと「We love the EARTH」と答えるだろう


しかも「We love the EARTH」のリリースは、
リニューアル以前への「復古」的な意味合いもあるが、
「Rhythm Red Beat Black」の場合は、
TMNの新しい音という積極的な意義付けも可能である


言うまでもなく「Rhythm Red Beat Black」は、
「Rhythm Red」のタイトルチューン的位置にある
実は「Rhythm Red」のタイトルは、
当初「Rhythm Red Beat Black」にする案もあった
おそらく長すぎて覚えづらいため、より頭に残りやすいように、
「Rhythm Red」だけにしたのだと思う


曲名は「Rhythm」「Beat」という音楽の基本用語に、
頭文字の共通する「Red」「Black」を並べたもので、
具体的な意味よりは、言葉の印象を重視したものだろう
つまり「Rhythm Red」も「Beat Black」も、
TMNとして呈示する音を象徴する語に過ぎず、
シークレット・リズムと同様に具体的内容には乏しい
藤井徹貫は後付けで意味を解説していたりするが、
もちろんほとんど信憑性はない
(ベルリンの壁だの…ハァ?)


作詞は坂元裕司である
全体としてはパーティで見かけた魅惑的な女性に向けての、
男性の想いを歌ったものである
小室はデカダンスをテーマとした歌詞と言っており、
退廃的な夜をイメージしたものらしい


リニューアルの3つのキーワードについて、
「シークレットリズム」「終末への逃走」は、
それぞれ「Secret Rhythm」「World's End」が担当したが、
「ピュア・デカダンス」はこの曲ということだろうか


歌詞中では何の説明も必然性もなく、
「Rhythm Red」「Beat Black」という言葉が登場し、
女性への想いと性行為の描写と並行しながら、
互いにまったく交わらず、独立して歌詞が進行する
以下に1番のBメロとサビを引用するが、
「Rhythm Red Beat Black」に関わる表現(ゴシック)が、
全体の中で何も意味を成していないことが分かるだろう

折れた翼でUH~ 火を消さないで
君が悲しむその全てから 守りたいから
It’s called “RED”
It’s called “BLACK”
Ain’t no shame in RHYTHM RED

誘い乱れるCarnival
Want no fame in BEAT BLACK
千の剣はPassion
消せない傷はバラと燃え尽きDestiny
光と闇が揺れる隙間でBurning Heart


あえて説明をつければ、
日本語歌詞が象徴するデカダンス性が、
「Rhythm Red」「Beat Black」の本質であるということを、
「It's called "RED"」「It's called Black」で
表現しているとも言えるかもしれないが、
ともかくアルバムタイトルと関わるキーワードを散りばめることが、
この歌詞を書く際に要求された事項だったのだろう


ただしさすがに脚本家だけあって、
使われている言葉自体はセンスがある
一々意味などを考えずに語呂と雰囲気だけ味わうなら、
これで十分だろう
特に余計な要素の混入しないAメロの部分は普通にかっこいい

ワインで濡れた甘い唇は 閉じたままでも心焦がす鍵
琥珀の絨毯に沈むハイヒール 爪の先からリズム刻んでる
花束ちぎるその指でならば 胸の隙間を癒せる媚薬さ
この終末に出遭えた奇跡を はかない女神君と過ごしたい


ちなみにどうでも良いことだが、
今回の記事を書くまで、「この終末」は「この週末」と思い込んでいた


この曲はタイトルに関する限り、
「Rhythm Red」のタイトルチューン的位置付けだが、
曲自体はアルバムの中で異質である
「Rhythm Red」のコンセプトがハードロックだったのに対し、
この曲では派手なディストーションギターもツーバスドラムもない
シンクラヴィアで処理したトーキングモジュレータの音の他、
スクラッチ音も入っており、クラブを意識したものとなっている


実はこの曲の原形は、
「Rhythm Red」レコーディング時に作られたものではなく、
より以前、1990年1月頃に作られていた
George Clinton来日公演に影響されたものだと言う
つまりもともとハードロックへの方向転換を見据えて作られたものではない


実際に当初は「Rhythm Red」に収録する予定ではなかったのだが、
レコーディングの終わりに近づいた頃、
ダンスナンバーも一曲くらい入れようということで収録されることになった
小室は終末のパーティーを表すダンス・チューンと言っており、
ユーロビートとは違うところから出たものとしている
小室はハウスミュージックを意識していたとも言っている


小室は、もしもロックの方向で行かなかったら、
アルバムは「Rhythm Red Beat Black」の方向になったかもしれないと言っている
小室が本格的にハウスミュージックに傾斜するのは「EXPO」期だが、
すでに「CAROL Tour」の頃からハウスへの関心は強く、
ユーロビートの次はハウスに行く可能性は十分にあったのである


だがそれにしても、
「Rhythm Red」の異質分子だったこの曲をシングルカットしたのは、
意外な感がないでもない
カップリングの「Dreams of Christmas」は、
ファンへのサービス的なものだったとしても、
やはり「Rhythm Red」的な雰囲気の曲ではない
この後に続くシングル「Rhythm Red Beat Black ver.2.0」は、
さらにハウス色を強めている


「Rhythm Red Beat Black」リリースは11月に告知されており、
すでに「Rhythm Red」リリース後まもなく、
「Rhythm Red Tour」開始以前には、
非ロック的要素をアピールするようになったように見える
この頃にはすでにハードロックの次に関心が移っていたのだろうか
あるいはリニューアルに対する旧来のファンの批判的態度を見て、
様子見の意味も込めてこれをシングルにしたのかもしれない
小室は、この曲がアルバムの中で人気があった旨を発言している


この曲で印象的なのは、イントロの笑い声のSEと、
特徴的なトーキングモジュレータの音である
笑い声のSEは翌年「Crazy For You」でさらに大々的に用いられるが、
その前史的なものと言えるだろう


曲では全体的にシンセの音が表に出ており、
「Rhythm Red」の他の曲とは異質である
イントロではサビのフレーズが目立つシンセで奏でられ、
歌に入ってからも歌と同じくらいシンセが目立ち続ける
夜の雰囲気を表現する怪しげなシンセの機械的な音色が、
私としては本当にツボである
荒々しい男性のコーラスも、この雰囲気を増幅している


この曲では歌詞とサウンドが相まって、
大人の雰囲気が充満している
「Rhythm Red」の典型的なサウンドではないものの、
確かにTM NETWORKでは出せなかった音がここにはあると思う


この曲は1990/12/1よりハウスO'ZACKのCMソングに起用された
小室の「Shout」に続いて二回目の起用となる
「Rhythm Red Beat Black」を使ったのは、
「ハウス」と掛けたとのことである
あるいはこの曲がシングルカットされたのは、
ハードロック路線の変更を見据えたものという深読みをする必要はなく、
単にCM用にハウス曲が選ばれただけということかもしれない


CMの内容は、TMNの3人がクラブらしきところに入り、
「TMN」と書いたプリペイドカードを店のマスターに見せ、
(クレジットカードではないそうだ)
マスターがO'ZACKを3人に渡すと言うものである
合間にガルボアも出るが、ファン以外には意味が分からないだろう
個人的には最後で、
ウツがO'ZACKの袋を振って音を聞いているところが気に入っている




なお2014年30周年記念ツアー「the beginning of the end」では、
この時のタイアップ関係に基づいて、
ツアーグッズとしてTM3人の写真をプリントした特別版O'ZACKが販売された
中にはランダムで小室・ウツ・木根の写真をプリントしたカードが封入されており、
会場ではこれを目当てに、O'ZACKを大量に買い込むファンも垣間見られた


カップリングの「Dreams of Christmas」についても触れよう
この曲は「Twinkle Night」「Leprechaun Christmas」に続く、
TMクリスマスソング第三弾である
作詞は小室哲哉、作曲は小室(Bメロ・サビ)・木根(Aメロ)である
一日で曲作りからレコーディングまで済ませたという


ミディアムテンポのさわやかな曲で、
「Rhythm Red」風のハードロックサウンドとは異なる
エレキギターも使われていない
ただイントロがハモンドオルガンで始まるところは、
この頃の小室の嗜好が表れていると言えるかもしれない
シンセサイザーを一切使わずに、全て生楽器で演奏されている


この曲は、メインボーカル四人という珍しい形式を取っている
1番のAメロはウツ、Bメロは小室、
2番のAメロは木根、Bメロは葛城哲哉で、
1・2番ともサビは4人で合唱である
TMにこうした作りの曲は他に存在しない


ただしこれは当初からの予定だったわけではなく、
当日ウツが風邪のために全部を歌うことができなかったため、
急遽このような形にしたということである
1番Aメロのウツボーカルには木根コーラス、
1番Bメロの小室ボーカルには葛城コーラス、
2番Bメロの葛城ボーカルには小室コーラスが入っているのに、
2番Aメロの木根ボーカルにウツコーラスが入っていないのも、
ウツのノドの調子が悪かったためだろう


歌詞の内容はあまりなく、
「クリスマスの日に会いたいね」という程度である
よくネタにされるのは小室のパートで、
「君はきっと待っているよ」のところは、
「君はきっと埋まっているよ」としか聞こえない


この曲はカップリングながら、
NTTポケットベルのCMソングとなった
シングル収録の二曲ともタイアップ付きだったことになる
この曲は次のアルバム「EXPO」に収録されず、
以後のベスト版にもまったく収録されなかったため、
この曲の存在がシングルの価値を高めることになった
(同曲の別バージョンは「Wild Heaven」にも収録)


その後2004年になって、
ファン投票ベスト版「Welcome to the Fanks!」の特典ディスクとして、
アルバムの形でこの曲を聞くことができるようになった
「Welcome to the Fanks!」の実態は、
特典ディスクを餌にしたベスト版販売だったと言えるが、
その中でも一つの目玉がこの曲だった
現在では2012年リリースの「Original Singles」でも聴くことができる


なおglobeのKCO(Keiko)が、
2003/12/10のソロシングル「KCO」で、
小室ソロ曲の「Christmas Chorus」と並んでこの曲をカバーしている
2003/12/4の「AAA '03」では、
ウツ・木根のコーナーに小室・KCOがゲスト出演し、この曲を演奏している
ボーカルはKCO一人で、歌詞も少し変わっている


「Rhythm Red Beat Black」は現在までTVで演奏されたことがない
名曲であるだけに残念だが、
確かにTV番組向けではないかもしれない
これに対して「Dreams of Christmas」は、
一度特番で披露されたことがある
これについては別章で触れることにしよう


ライブについては、
「Rhythm Red Beat Black」「Rhythm Red Tour」の他、
「EXPO Arena」「4001 Days Groove」「Double Decade “NETWORK”」「Double Decade Tour」「30th Final」で演奏された
定番曲というほどでもないが、まあまあの演奏率ではある
20周年の頃、小室が良くできた曲として挙げている
曲の雰囲気もあり、「Kiss You」と並んで演奏されることが多い


「Dreams of Christmas」は、曲の性格上、
ツアーのセットリストに恒常的に組み込まれることはなく、
クリスマスの時期に臨時で演奏されることが多い
「Rhythm Red Tour」「Tour TMN EXPO」の他、
ウツのソロライブやウツ・木根のジョイントライブで何度か演奏されている
ただし2003/9/7開催の「FAN EVENT in NAEBA '03」では、
季節感もなにもなくこの曲が演奏されている

(2009/7/9執筆、2017/10/30加筆)

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