7-44 EXPO Folk Pavilion -Revival-

8/17、iTunesおよびamazonのプライムビデオで、「Vision Festival」「Rhythm Red Live World's End」「EXPO Arena Final "Crazy 4 You"」「final live LAST GROOVE 5.18」「final live LAST GROOVE 5.19」ライブBlu-ray 5タイトルの有料配信が始まりました。
レンタルは500円、購入は2546円(「Vision Festival」は2037円)です。


なんでこの5つなんだろう?と思いましたが、ああそうか、またM本さん問題ですか…。
既配信分の「incubation Period」「START investigation」と合わせて、7タイトルが配信されたことになります。
ライブ映像は手を出していない方なども、amazon prime会員なら追加料金不要で見られますし、そうでない方でもレンタルなら気軽でしょうから、一度お試しいただければと思います。


そろそろウツのソロツアー「U Mix」が始まります。
当初は会場に100%の収容率で観客を入れる予定でしたが、結局50%(広島公演以外)で行くことになりました。
すでにウツFCでは、10・11月公演分のチケット申し込みも始まっています(9・10月分はすでに受付終了)。
そういやウツのソロ曲のツアーて、2018年の「Tour Thanotos」以来3年ぶりなんですね。


木根さんは、氷川きよしさんへの提供曲が発表された以外はあまり動きがないですが、9/7にFMサルースの「SALUS all in one」に出演したようです。


小室さんのネット配信番組「Tetsuya Komuro Studio」は、小室さんの手描きスタンプ配信など、色々とやっているようです。
番組ロゴ入りの特製エコバッグのプレゼントなんかもしているみたいです。
8/20には「Time To Count Down」、8/27には「8月の長い夜」、9/3は「Magic」を演奏したようです。
(私は見ていないので伝聞体でしか書けませんが)


9/9には、TOKYO DANCE MUSIC WEEK 2021なる企画の一部として配信された無観客イベント「#SaveTheDance 〜#音楽はみんなの再生エネルギーとなる〜」に、小室さんが出演しました。
小室さんとSUGIZOさんが一緒に出演するとの告知を見て、「え、この2人て何つながり?」と、意外な印象でした。
ただフタを空けてみると、2人は何人かのミュージシャンや実業家と一緒に音楽の未来のあり方を語っただけで、ライブパフォーマンスなどを披露したわけではありませんでした。


私は全然知りませんでしたが、ネットを見てみるに、#SaveTheDanceなる企画は遅くても年始くらいから動いていたようです。
オフィシャルサイトによれば、以下の事項を目的とした組織です。

・アーティスト、音楽家、ミュージシャン、若い才能、文化の生まれる場所、LIVEの現場を守り存続させていくこと
・コロナ禍の自粛期間における文化施設(LIVEハウス・クラブ・コンサート会場)や実演家の支援、事業規模や現状に応じた補償を求めていくこと
・国や地方自治体と現場のハブとなり、小さな声を届けること


要するにコロナ禍で大変なライブハウス等の関係者を守るべく設立されたもので、3月くらいから頻繁に政治家に訴えかけを行なっています。
活動の中心にZeebraさんがいるので、そこから小室さんにも声がかかったものでしょうか。
「2/22現在」の注記がある賛同者リストにも小室さんの名前が見えており、6/18にはZeebraさんやSUGIZOさんと一緒に東京都庁を訪れています。
イベント「#SaveTheDance」では、今小室さん・SUGIZOさんを中心にキャンペーンソング「Save The Dance」を作っていることが明かされ、そのデモ音源と制作現場の風景が放映されました。


#SaveTheDanceは、名前を連ねている方々を見るに変な組織ではなさそうなので、頑張っていただければと思います。
ただイベントのトークでは電気がどうのSDGsがどうのという話が熱く語られ、なんか別の運動が入り込んできているような感じもします。
いや、再生エネルギーの問題自体は大事と思うんですけど、小室さんは変に利用されないように、自覚的に動いてほしいです。
あとSUGIZOさんがそういうことに熱い方であること、今回のイベントで初めて知りました。


今後の話では、KREVAさんが9月のマンスリープレゼンターを務めるJ-WAVEの「WOW MUSIC」で、9/25に小室さんがゲスト出演するとのことです(24:00~25:00)。
こちらは後日Youtube内の音楽コンテンツ「Music Fun!」でも映像が配信されるみたいです


10/10には六本木ヒルズで開催される「J-WAVE Innovation World Festa 2021」に小室さんが出演します。
「Innovation Festa」、久しぶりですね。
トークは事前登録すれば無料でも見られるみたいですが、ライブは基本的に有料配信のようです。
説明文を見るに、小室さんはアートパフォーマンスとトークセッションに出演するとのこと。

日本を代表するアーティスト、音楽プロデューサーの小室哲哉が再びイノフェスのステージに戻ってきます!
今回はステージ上でNFTアートをライブで創作するアートパフォーマンスを披露。
そしてNFTと音楽に関するトークセッションにも登壇予定。なにが起こるのか?大注目のステージです!


アートパフォーマンスてのは、リンツでやったインスタレーション的なやつでしょうか。
このパフォーマンス映像は、NFT作品として後日販売されるそうです。
NFT…。なんだかまた分からないものが出てきました。
いや、こういう新しいものに飛びつきたがるのがいかにも小室さんらしいんですけどね。


以上、内から湧き上がる「まあそれはいいからTMをやってください」という心の声を何度か抑えながら近況をまとめました。
では本題に入ります。

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2008/11/4の小室の逮捕が、TM25周年企画開始を控えていたウツ・木根やM-tresスタッフにも大きな衝撃だったことは、想像に難くない。
ウツも木根も、2008年5月に「TM NETWORK play SPEEDWAY and TK Hits!!」を終えた後はソロ活動を行なっていたが、それもTM25周年企画の本格始動までの予定で、水面下ではTMの企画も同時並行で動いていただろう。
それらは小室の逮捕によってすべて白紙になってしまったが、スタッフは会場のキャンセルなどでてんてこまいになっていたと考えられる。
表には出ていないが、金銭的な損害も少なくなかったはずだ。


折しもウツは、小室逮捕の翌日11/5がU_WAVEのライブ「evolutio」の初日公演だった。
ライブにはMCが設けられず、事件に関する直接の言及もなかったが、初日公演では最後にウツから観客に向けて、「心配かけたけど、ステージを見てもらえれば分かってもらえたかな」とのコメントが出された。


なお直接TMと絡むわけではないが、とばっちりを受けたのが劇団の音楽座である。
音楽座はかつて1991年に小室が劇伴を手掛けたミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」を上映したことがある。
この公演は好評だったため、その後も内容を変更しながら上演を繰り返した。


音楽座自体は1996年に解散したが、2004年にRカンパニーによって再結成され、2008~09年には「マドモアゼル・モーツァルト」が上演されることになった。
実は2005年の再結成公演でも「マドモアゼル・モーツァルト」が上演されたのだが、これは「21C:マドモアゼル・モーツァルト」と題し、演出が一新されて小室の楽曲は使われなかった。
これに対して2008~09年の公演は、久々に小室の楽曲を用いたものだった。


ところがその初演日の2008/12/18を先立つ1ヶ月半前に小室が逮捕されたため、スポンサーが下りてしまい、大々的な広告が打てなくなった。
音楽座はウェブ上に動画をアップしたり、小室ファンを集めたトークショーを行なうなど、自力で宣伝に務め、どうにか上演にまでこぎつけたが、上演中止の判断もあり得ただろう。


小室逮捕の当日は、ウツも木根もオフィシャルサイトでコメントを出すとともに、同趣旨のFAXを各局に送った。
一部ワイドショーでは朗読もされた。

TM NETWORKを応援してくれているファンの皆さま、また多くの方々にご心配をおかけしました。

これまでの人生の長い時間を一緒にすごしてきた友達であり、
仲間である小室哲哉の今回の件は、いまだに信じられませんし、信じたくありませんが、
事実であるなら すべてを明らかにしてもらいたいと思います。
でも、彼とともに音楽を作り、笑い、悩み、楽しんできた僕らの歴史は変わりません。

今、彼と話すことは叶いませんが、彼なら償い、また音楽に帰ってきてくれると信じています。

2008.11.4     宇都宮隆


TM NETWORKをずっと応援してくれている皆さんには、ご心配をおかけして申し訳ございません。
僕は共に音楽を創ってきた友人として、今までも、これからも彼と出会えた事のよろこびと感謝の思いは変わりません。そして彼をリスペクトする気持ちも変わることはありません。
多くの方が、彼に悪いイメージをもたれたかも知れませんが、彼が作った音楽がたくさんの人達に勇気を与えてきたことも事実だと思います。
だからなおさら残念という声もありますが、僕は、彼がゼロから立ち直る力も持っていると思います。
だから僕は、TM NETWORKの復活もあると信じています。

木根尚登


両者の文章作成に当たって事前に相談があったのかは分からないが、小室と歩んできた歴史を否定せず、その復帰に期待するという趣旨は変わらない。
特に木根は、この微妙な時期にTMの復活の可能性にまで言及している。
随分と踏み込んだものだと思う。


小室みつ子も木根と連絡を取ったようで、当時ウェブ上の日記に心情を記している。
抑え気味に書かれてはいるが、公式コメントではないからこその感情のこもった文章である。

朝から騒がしいようです。私はテレビは見ないので、メールやら電話やらで様子を伝え聞いているだけですが…。今は彼とご家族のお気持ちを想像して胸が痛いだけです。一般に認識されている彼の姿はほんの少し…。私にとっては彼はミュージシャン。才能のあるクリエーター。すばらしい曲を書いた人、そして書ける人。
昼頃きねちゃん(木根尚登さん)と話をしました。内実の話とか今更な話ではなく、ただ友達としての話…。木根ちゃんが公式に出したコメントを教えてもらったのですが、私も同じ気持ちです。
彼が生み出した曲は、変わらなくいつも誰かの心にあって、そこで生きています。私はそのほんの一部を一緒に作ることができて今でも感謝しているし誇りに思ってます。これからも一緒に作る機会があればとても嬉しいです。刑事事件は刑事事件としてこれからいろいろ進んで行くとは思います。それはきちんとしてもらって…。身体だけは大事にしてほしいです。
小室哲哉さんのファンの方たちは変わりなく、ミュージシャンとしての彼を見ていてくださると思います。私が言うのも変なのかもしれないですけど……これからもどうぞよろしくお願いいたします。


他にも葛城哲哉・阿部薫・久保こーじ・西村麻聡など、TM時代の関係者でブログなどをやっていた者たちは、次々とコメントを出した。
(なお私は当時本ブログで葛城氏のブログにリンクを貼ったが、その時に誤ってトラックバックを送ってしまい、現在まで本ブログへのリンクが残ってしまっている。消せれば消したいのだが…)
小室みつ子はメディアでの取り上げられ方に違和感を感じることを吐露しているが、阿部薫も「それにしても、ワイドショーにしろ何にしろ、本人にしか分からん事を、コメンテータやら何やらが憶測で語り合っているのを見ると、腹が立ちますな」と、同様の趣旨のことをより直接的に言っている。


小室は11/21に保釈されたが、木根はその翌日に電話をもらったという。
小室はひたすら「ごめん」と言い続けたという(木根によれば何百回も)。
おそらくウツも含め、関係者に一通り連絡し謝罪したのだろう。
なお木根は最初の電話の後、年明けにもKEIKOに電話をして小室と話したことを述べている。
わざわざ電話をしたことを取り上げているのは、直接会う機会がなかったためと見られる。
小室は保釈後、2009年5月の判決までavexの千葉龍平宅に仮住まいしており、その間は連絡も限定的だったと思われる。


木根ソロライブのMCによれば、2009年8月以前のある時、TM3人で会うことがあったらしい。
その時期は明確ではないが、おそらく判決が確定して小室がavexで活動することが決まった後になって、初めて今後のTMをどうするか話し合ったものと推測される。


この間、ウツはテレビへの出演を一切せず、ライブでも直接の言及を避けたが、木根は時折テレビに出演し、小室関係のコメントを出している。
また2009/4/23の小室の第3回公判では、小室への被告人質問などが行なわれたが、この時に参考資料として6000人のファンおよび関係者からの減刑嘆願書が寄せられた。
これが量刑に当たってどの程度考慮されたかは分からないが、小室の実刑回避を願う者が一定数いたことが分かる。
その中には木根の嘆願書もあった。


木根嘆願書の全文は、小室の「罪と音楽」141~142頁に転載されているが、締めくくりは以下のようなものだった。

今の私は、ファンの方々と同じ心根で待つ以外にできませんが、小室被告が罪を償ったなら、周囲の音楽関係者と共に、彼を受け入れ、同じ過ちに陥らぬよう見守ります。今回の事件を風化させぬように努めます。何卒ご理解頂き、寛大なご判断をお願い申し上げます。
木根尚登


また小室の判決が出た2009/5/11に木根のオフィシャルサイトに掲載されたコメントも転載しておこう。

判決が下りました。
正直ほっとしてます。ファンの皆様には本当に多大なご迷惑、ご心配をおかけしました。
またいろいろな形でご協力していただき誠にありがとうございました。
これからは友人として彼と共に初心に返り、また皆で感謝の気持ちを力に変えて頑張って行きますので、
これからも応援よろしくお願いします。本当にありがとうございました。


なお木根は小室が保釈された2008/11/22に、ソロツアー「talk & live vol.11~New Town Street~」を開始した。
このツアーはニューアルバム「New Town Street」のリリースに伴って開催されたものだが、過去の曲からは「友よ、風に抱かれて」「My Best Friend」など、友をテーマにした曲が選ばれた。
当然、小室のことを意識した選曲だろう。


アンコールでは、未発表曲「春を待つ」が披露された。
これは小室に向けた曲であり、小室が拘留されていた17日間の間に作ったものということになる。
歌詞は小室との思い出を振り返り、これからもう一度やり直そうと伝えるものである。
サビの歌詞だけ、以下に転載しよう

みんな待っている 笑顔で待っているよ
また一緒に創ろう 素敵な音楽を
家族も待ってるよ 友達も待ってるよ
彼女も待っているよ 黄色いリボンつけて
寒い冬が来るよ 木枯らしを連れてくる
だけど冬はいつか 必ず春になるから
みんな待っている いつまでも待ってるよ
桜の木の下で 君の帰りを待っている


木根は後にこの曲について、以下のようなコメントを出している。
楽曲制作の趣旨を確認するために引用しておく。

小室があの事件を起こしたとき、マスコミを含め各所からコメントを求められました。できる限り誠意をもって対応したつもりですが、言葉とは難しいものです。僕の真意が伝わったり、歪められたり。だから、歌にしました。その瞬間、僕は彼とまた一緒に音楽をやりたいと、心の底から思っていました。


「春を待つ」は2008年年末から音源配信され、CDは2009/1/16からオフィシャルwebshopで数量限定で通販された(2010/1/21にも再版)。
2012年には、2001年以後の楽曲を対象にしたリクエストベスト「キネベス」がリリースされたが、その中で1位になったのがこの曲である。


なお小室の執行猶予付き判決が確定してから2ヶ月後の2009/7/18には、長らく活動を休止していたSerika with DOGが、小室に捧げる曲として「Can Try Again -to TK-」を配信リリースしている。
作詞はSerika、作曲は木根である。
Serikaは1983年、小室哲哉のプロデュースでデビューしたバンドで、木根も楽曲提供をしていた。
その時の縁がまだ続いていたということだろうか。
この後、小室とSerikaの間で何か接触があったのかは不明である。


さて、雲散霧消してしまったTM25周年企画だったが、一つだけ、小室逮捕前に発表されていた企画が存在した。
2008/12/10、府中の森芸術劇場どりーむホールで開催された「UTSU & KINE EXPO Folk Pavilion -Revival-」である。
ウツ・木根の公式サイトで10/14に開催が告知された。


ライブの趣旨は、かつて「Tour TMN EXPO」の1コーナーとして行なわれていたフォークパビリオンの形式で、1本のライブをやろうというものである。
1992年には半分がフォークパビリオンだった「TMN Folk/Metal Pavilion」が開催され、2003年の「tribute LIVE」でも「帰ってきたフォークパビリオン」のコーナーが設けられたが、1本のライブ丸ごとフォークパビリオンというのはこれが初めてである。

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気にかかるのは、10/14というライブ開催告知のタイミングである。
10月半ばにはTM3人が打ち合わせを行なったという情報があり、ライブ開催告知はおそらくこれを踏まえて行なわれたものだろう。
ならばこのライブは、もともとTMの活動の一環として企画されていた可能性が高い。


ライブの開催日は「CAROL」リリース20周年の2008/12/9の翌日に当たる。
以前私は、TM25周年の企画告知は「CAROL」記念日に行なわれる予定だったことを推測したが、それならばその翌日の「EXPO Folk Pavilion -Revival-」も、TM25周年に絡めた企画だった可能性が浮上する。


これについて参考にしたいのが、小室逮捕時の「週刊文春」の記事である。
これによれば、10/31に年内のTMのライブの打ち合わせが予定されていたが、小室は「それどころじゃない」と言って来なかった。
TMのライブの開催は、小室が逮捕された11/4の時点で告知もされておらず、仮にその後告知される予定があったとしても、年内に開催するというのは日程的にも困難である。
そこでは私はこれまで、この記事は何かの誤りと考えてきたのだが、実は必ずしもそうではないのかもしれない。
つまりここでいう年内のTMのライブとは、実は「EXPO Folk Pavilion -Revival-」だったのではないかということである。


もちろん「EXPO Folk Pavilion -Revival-」はTM3人ではなくウツと木根の企画だったが、10月半ばに3人の打ち合わせを経て告知されたものだったのならば、そこに小室も絡むことが想定されていたとしてもおかしくはない。
あるいは途中でゲストとして小室が登場し、3人で25周年に向けた抱負を語って1~2曲を演奏するというような演出が想定されていたのではないか。


そう考えると、ライブ会場として多摩地方にある府中の森芸術劇場が選ばれたことも注目される。
多摩はTMの語源であることからも明らかなように、TM3人の故郷である。
この会場はウツ・木根が70~80年代の楽曲を演奏しながらアマチュア時代の思い出を振り返る場としてだけでなく、TMの始まりの地としての意味も持っていたのではないか。
それはTM以前のことを思い出しながら「SPEEDWAY」を作ったこととも合わせ、25周年企画開始に当たり自らを振り返る試みでもあったとも考えられる。


なお「EXPO Folk Pavilion -Revival-」には、「Tour TMN EXPO」のフォークパビリオンにも出演した浅倉大介もゲスト出演した。
ライブ開始後30分経ってからステージに呼ばれ、以後5曲目からアンコールまで出ずっぱりだった。
正直、これでゲスト扱いはひどいと思う。


ライブの選曲は大部分が70~80年代のヒット曲で(大半がフォーク)、5曲だけTMの曲が演奏された。
かつての「Tour TMN EXPO」のフォークパビリオンではフォークとTMが半々くらいだったが、この時は前者の比重が圧倒的に高かった。
演奏曲はウツ・木根が好きな曲を基準に選んだもので、「Tour TMN EXPO」とかぶるものが多い。
井上陽水「最後のニュース」の早口パートや同じく陽水の「桜三月散歩道」のセリフを浅倉が担当したのも、「Tour TMN EXPO」と同様である。


その日限定のユニット名を決めたのも「Tour TMN EXPO」に準じていた。
この時2人はレモニーハイムを名乗り、ウツが1号、木根が2号、浅倉が3号となった。
以前のレポートでは木根が1号と書いたが、ここではmagneticaの会報に依る)
レモニーハイムはTM時代に木根が住んでいた多摩のアパートの名前である。


ウツと木根がギターをかき鳴らして1曲目「夢の中へ」のイントロを演奏すると同時に、ステージにかかっていた厚い緞帳が上がって、ライブが始まった。
これは昭和の頃によく見られた演出だったらしく、木根は自分でこれがやれてうれしかったらしい。
ステージには演者の椅子・楽器以外はスクリーンがあるだけで、そこに手作り感のあるプロジェクタの映像が映し出されるという、いたってシンプルなものだった、


その後は2~3曲ごとにMCを挟みつつ、ライブは進行した。
ウツ・木根はアコースティックギターを持って椅子に座り、弾き語りを続けた。
浅倉の椅子の前にはキーボードが置かれた。
曲によってはピアニカを演奏することもあったが、これは「Tour TMN EXPO」の時と同じである。


この時のセットリストおよびライブレポは以前書いたことがあるので、詳しくはそちらを参照されたい。
パフォーマンスについて言うと、演出などがなく歌に集中できる環境で、自分が好きな曲を選んだということもあろうが、ウツの歌声の美しさが際立つライブだった。


本編でのTM曲は「Fantastic Vision」「Fighting」「Winter Comes Around」の3曲のみで、7曲程度を演奏して1曲TMを歌う、という割合だった。
最初に演奏されたTM曲は、7曲目の「Fantastic Vision」である。
「tribute LIVE」の帰ってきたフォークパビリオンでも演奏された曲であり、このライブで演奏されるのは自然な流れだったのだろう。


この曲の後のMCで、木根はTMの曲が少ないことについて、「自粛なのでね」と余計なことを言った。
ウツは「余計なことをいいやがって」と言いすてたが、半ば本気で怒っていたのかもしれない。
この後は長時間のMCがあり、3人で「Tour TMN EXPO」の思い出などを語ったが、小室の話には一切触れなかった。


「Fighting」は、「Tour TMN EXPO」のフォークパビリオンで演奏されなかった数少ないバラードである。
バンド演奏でも1987年の「Fanks Cry-Max」以来演奏されておらず、観客の多くはこの時初めて聞いたと思う。
なお浅倉はこの曲ではピアニカを担当した。


「Winter Comes Around」は、ライブのセットリストに正式に組み込まれたのは1988~89年の「CAROL Tour」しかない。
木根ソロライブで演奏されたことはあるが、ウツボーカルでの演奏は1992年の「EXPO Arena」のフォークパビリオン以来である。


「Fighting」「Winter Comes Around」は、ともにアコギを中心とした演奏でも映える曲であり、むしろウツの歌声をじっくりと聞ける良アレンジだった。
ファンの多くも嬉しい選曲だったと思う。
特に自分は「Fighting」の歌唱に感激した覚えがある。
また「Fighting」の選曲は、時期から見ても、小室に捧げる意味があったのだと思う。
「君の戦いの歌 闇にひびいてゆけ」という歌詞も、そう考えると重いものがある。


このライブで設けられた特別企画に、リクエストコーナーがあった。
会場のリクエストに応えて、即興で演奏するというものである。
歌は3人が1曲ずつ担当し、浅倉が伊勢正三「22才の別れ」、木根がイルカ「なごり雪」、ウツがモップス「たどりついたらいつも雨ふり」を歌った。


しかしフォークのリクエストを受け付けるのがコーナーの趣旨だったはずが、会場からまっさきに上がったのはTM曲で、木根はまた冗談ぽく「自粛してるので」と返した。
スタッフがリクエスト曲の譜面を用意するのに手間取る場面もあり、この後で開催された追加公演では、このコーナーは行なわれなかった。
なおこの日の公演はリクエストコーナーの混乱のため、公演時間が3時間弱に及んだ。


本編が「Winter Comes Around」で終わった後、アンコールでは3人とも、「Tour TMN EXPO」の時と同じオーバーオール姿で登場した。
ここはファンサービスの時間で、TM曲の「パノラマジック」「Dreams of Christmas」が演奏された。
前者は「1974」と並ぶTM始まりの曲であり、「Dreams of Christmas」は季節柄の選曲であろう。


このライブは好評だったようで、2009年2月には追加公演が発表された。
ウツ・木根からすれば、TM25周年企画が実現できなくなった現状を踏まえ、せめてもの埋め合わせの意味もあったのかもしれない。
追加公演は4/18・19に大阪厚生年金会館、4/29に愛知勤労会館、5/4に東京JCBホールで開催されており、2009/4/21のTM25周年記念日の周辺に設定された。
グループ名は大阪が「春うらら」「しだれ桜」、愛知が「寒冷前線」、東京が「東京ネズミーランド」だった。


ゲストとしては府中の森公演と同じく、浅倉大介が(ライブの大部分で)参加した。
また曲によっては、大竹茂美という人物がパーカッションを担当した。
大竹はプロのパーカッショニストではなく、普段はウツのライブでローディを務めている人らしい
なお追加公演では、ウツ・木根がギターを弾くイラストも作られ、会場のスクリーンにもしばしば映し出された。
このイラストは、以後のフォークパビリオン企画でも用いられ、グッズにも使われた。


フォークの選曲は、府中の森公演から変化している。
府中の森公演のリクエストコーナーで曲名が出た「たどりついたらいつも雨ふり」「22才の別れ」が取り入れられた他、ファンから集めたリクエストも踏まえて、3月に選曲されたという。


日替わり曲も数曲あったが、これは大阪が2公演あったためだろう。
最後のJCBホール公演については以前レポートとともにセットリストを掲載したことがあるが、大阪1日目はこれと同じで(セットリストA)、大阪2日目は愛知公演と同じだった(セットリストB)。
TM曲を除き、日替わり曲は以下の通りである。

・セットリスト(A):「22才の別れ」「今日までそして明日から」「時の流れに身をまかせ」「また逢う日まで」
・セットリスト(B):「白い冬」「シンシア」「異邦人」「あずさ2号」


府中の森公演と追加4公演を比べると、府中の森公演で演奏された楽曲中、TM曲・リクエスト曲を除く16曲の内、追加公演では7曲(セットリストA)または10曲(セットリストB)が選ばれた。
Aの方が重複が少ないのは、JCBホール公演の参加者に府中の森公演参加者が多くなるという見込みによるものだろう。


アコギを長時間弾くのは、普段アコギを演奏しないウツとしてはつらく、指先が腫れて痛かったという。
府中の森公演でも苦しんだ反省から、追加公演では氷入りの水が入った容器を用意して、トークの間指を冷やして回復させていた。
特に大阪公演が2日続いたのは大変だっただろう。


TM曲の入るタイミングは、府中の森公演と同様だった。
曲は本編が「月の河」「永遠のパスポート」「Another Meeting」、アンコールが「パノラマジック」「We love the EARTH」(セットリストA)または「パノラマジック」「Just One Victory」(セットリストB)だった。
「パノラマジック」以外は、府中の森公演で演奏されなかった曲である。


「永遠のパスポート」「Just One Victory」は2003年の「tribute LIVE」の「帰ってきたフォークパビリオン」でも演奏された曲である。
「月の河」はTM唯一のフォーク曲である。
「Another Meeting」はよく2人の時に演奏される曲である上、アコギだけでも対応可能である。
「We love the EARTH」「Spin Off from TM 2007」でアコースティックアレンジで演奏されたことがあるのが関係しているのだろう。
このようにTM曲はライブのコンセプトによく合っているものが選ばれた印象だが、あまり意外性がなかったとも言える。


以上、合計5回の「EXPO Folk Pavilion -Revival-」の様子を見てきた。
これらは基本的にはTM25周年の前祝い企画および穴埋め企画だった。
しかしその後も3回ほど、この後継企画が行なわれている。
それは2011/3/11の東北大震災を受けたもので、その復興のためのチャリティイベントとして開催されたものである。


すでに2011年5月には、ウツがFCでチャリティグッズを作成して販売しており、木根もライブでチャリティグッズの販売を行なっていた。
2011年の「Folk Pavilion」は、この流れで企画された。


まず2011/7/2・3には、「EXPO Folk Pavilion 2011」が渋谷Duo Music Exchangeで開催された。
この時は福島のデュオグループ涼風をゲストに呼んでいる。
ウツ・木根はこのライブの収益で楽器を一式購入し、福島市教育委員会に寄贈した。


セットリストは2009年と代わり映えのしないものだった。
TM曲は本編ラストの「Another Meeting」と、アンコールの「月の河」「Fantastic Vision」の、合計3曲が演奏された。
なおこのライブは、ニコ生でも有料配信されている。


2012/6/9・10にはMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで「EXPO Folk Pavilion 2012」が、2013/9/7・8にはYOKOHAMA Blitzで「EXPO Folk Pavilion 2013」が開催されている。
この時は選曲をガラリと変えてきており、2011年と2012年ではほとんどかぶりがない。
楽曲も歌謡曲やGSなど、フォーク以外の比率が上がっている。
これは後述のウツの「LIVE UTSU BAR」につながるものである。
TM曲はアンコールのみになり、2012年は「愛をそのままに」(木根ボーカル)と「Another Meeting」、2013年は「Another Meeting」だった。


2011年以後は浅倉・大竹に加え、松尾和博もギターとして参加するようになった。
松尾がチャリティの趣旨に賛同したこともあるが、ウツの指痛対策でもあったらしい。
さらにゲストとして、野村義男(ベース)やピエロのエディも参加した。
どちらもU_WAVEでのウツとの縁によるものである。


この時点で出演者はウツ・木根・浅倉・大竹・松尾・野村・エディの7人という大所帯となっており、フォークデュオという状態ではなくなっていた。
チャリティイベントということで、出演料なしで声をかけていたと思われる。


2014年には「EXPO Folk Pavilion」は開催されなかった。
この年にはTM NETWORK念願の30周年ツアーが春秋2回も開催されており、チャリティイベントを開催する余裕がなかったというのが実情だろう。


以後「EXPO Folk Pavilion」の開催はなくなるが、TM30周年企画終了後の2015/6/20・21に、ウツがEX Theater Roppongiで、東日本大震災チャリティイベントとして、「LIVE UTSU BAR~それゆけ歌酔曲!~」を開催する。
(6/23にも赤坂Blitzで追加公演)


「LIVE UTSU BAR」はウツのソロイベントで、木根は参加しなかった。
だがサポートとして野村義男・松尾和博が参加しており(他にキーボードとしてnishi-kenが参加)、「EXPO Folk Pavilion」の延長上の企画と考えることができる。


ウツとしては、フォークとは違う形にしたいと考え、歌謡曲をコンセプトにしたという。
各楽曲には、nishi-kenによる現代風のアレンジが加えられた。
アンコールで1曲ウツソロのオリジナル曲「times mile」を演奏した以外は、60~80年代の歌謡曲の演奏に終始した。


このライブはそれなりに手ごたえもあったようで、以後ウツは毎年春に「LIVE UTSU BAR」と題するライブを、同じメンバーで開催し続ける。
少なくとも2021年現在では、毎年開催されている。


「LIVE UTSU BAR」は2015年には東京公演のみだったが、2016年「LIVE UTSU BAR~それゆけ歌酔曲!~ギア2」以後は、全国のライブハウスを回るツアーになる。
全国ツアー化は、野村の提案がきっかけだったという。
なお本ツアーは、ファイナルの2016/5/12・13では別メニューになり、前半は歌謡曲、後半は木根・浅倉を交えたフォークパビリオンが披露された。
この日のみ、「EXPO Folk Pavilion」が限定的に復活した。


ウツは2013年まで、毎年秋にバンドで全国を回るツアーを開催することを活動の基本としてきたが、2014年のTM30周年の年を挟み、2015年以後は、春に少人数編成の「LIVE UTSU BAR」、秋にバンドツアーを開催するというスケジュールをルーティン化させる。
開催本数も2016~19年には、「LIVE UTSU BAR」が秋ツアーを上回った。


一方の木根は、しばらくはウツのような企画をあえて立ち上げることはなかった。
(ただしソロ曲・TM曲がかなりの比率を占めるライブだが、2010/5/30には原宿LaDonnaで「ひとりぼっちのフォーク・パビリオン」を開催している)
それまでもソロライブで頻繁にフォーク楽曲を演奏してきたから、あえてフォークと銘打つライブを開くこともなかったのだろう。


だが2020/12/29にはウツとともに、「年忘れ!!歌酔曲vsフォーク」を開催した。
これはウツの歌酔曲チーム(ウツ・野村・松尾・nishi-ken)と木根のフォークチーム(木根・山本英美・中村修)の対抗ライブという企画だった。
このライブの中で、木根チームは「K-Folk」とも呼ばれた。


さらに木根は2021/4/10・11に、「K-Folk 2021」と題するライブを開催した。
サポートには山本・中村が参加しており(さらにピアノとして海老原真二も参加)、「年忘れ!!歌酔曲vsフォーク」の延長企画ともいうべきものだった。
「K-Folk 2021」というタイトルは、2022以後の開催も意識しているように見えるが、ウツの歌酔曲と同様に、毎年恒例化させるつもりかもしれない。

春を待つ - 木根尚登
春を待つ - 木根尚登

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